December 8, 2011

Strawberry Nauts -ストロベリーノーツ- オウエン中!

タイトル
 Strawberry Nauts
 メーカー
 HOOKSOFT
 発売日  2011年11月25日
 原画  もとみやみつき/羽鳥ぴよこ
 松下まかこ
 シナリオ  雪仁
 評価
 78点(100点満点中)

基本的には王道中の王道の、ベタベタな萌えと恋愛を描き続ける安定したエロゲーメーカー、
HOOKSOFTの新作。このメーカーは根本的には王道恋愛モノこそ外さないものの、毎作多用な
個性やテーマを織り込んでくるのがもう一つの特徴ですが、今作も相変わらず他では見られない
工夫があったりで見ていて興味をそそらられる面白い作りを盛り込んでいます。
加えて体験版から伝わるその非常に軽快な雰囲気やプレイしやすさ、甘くニヤける
オイシイ展開の数々など、かなり親しみやすく触れやすい雰囲気が伺えたためなかなか前評判も高く、
HOOKSOFTのいつも以上を期待していた方は多かったのではないでしょうか。
私もそんなクチの一人でした。

さて最終的なその出来はと言うと。
まず一言で言ってしまえばトータルでは佳作レベルの良いゲームであるのは確かでしょう。
萌えゲーとしてのポテンシャルは安定して高く、キャラは可愛い、萌えやすい、イチャコラが楽しい
などなどこのタイトルに求められているものは確かにそのまま作品に内包されていると思いますし、
それに付帯して周囲に散見される数々の工夫も面白く、興味深いものだったのも印象深いです。
どちらかというとHOOK作品というよりはSMEE作品の発展実験形という方が表現として適切かもしれません。

しかし大きく問題となるのもそれら数々の工夫か。特にこの作品を大きく印象付ける一因である
「PIT」システムは面白さは確かにある反面、受け付けない人は最初から受け付けないだろうし
受け付ける人も最後まで楽しめるかや本編との兼ね合いなどなど数々の問題点はあり。
他にも利便性などなど刷り合わせの部分にまだ煮詰めが足りないところがあり、これらが
利点を相殺する形で足をひっぱっているのはなんとも惜しいところでした。

とはいえ基本的な全体構成の出来は悪くなく、ボリュームも十分ですし、萌えゲーとしては
十分及第点以上のものではあり。これ一本としても気軽に楽しめるものですし、
これからの発展性や洗練が楽しみになるような可能性のある明るいゲームでもあると感じます。


以下長文感想。



■ボリューム及びルート構成について
ボリュームは結構良心的な多さ。総プレイ時間は私で24時間ほど。メインヒロインである5人が
そのまま本筋のルートとして5本。その他、生徒会の二人組みで1ルート、ちょり先生で1ルート、
予約特典である上級生女子Cパッチを当てれば彼女のルートが1ルートの合計3ルートがサブヒロインの
ルートとして存在し、合計8種のエンディングが。これに加えてコミケに向けてレンチさんこと
すずめルートも開発中なので、最終的には9ルート存在するゲームとなります。メインルートだけでも
普通のエロゲーよろしい分量のストーリーがありますし、サブルートも30分程度ではありますが
サブヒロインのサブルートとしては十分及第点のおいしさは含まれています。更に更には
クリア後「俺の部屋」なるエクストラからメインヒロイン5人についてはおまけのHシーンが
(絵は使いまわしでシチュ変更のみですが)4シーンと、いちゃいちゃするコミュニケーションシーンが
2つずつ追加されたりと、なんかもう至れり尽くせりでヒロインを味わうお楽しみ要素が満載です。
「物足りなさ」とは真逆のかなりコストパフォーマンスの高い作品かと思います。無意味に長いわけでも
なく、かつがっつり楽しみたい人でも満足できる構成でこのバランスと量は非常にGOODかと。

■攻略について
基本的には狙ってるヒロインの移動先だけ選んでいればOKです。全く難さとは無縁です。
また、サブルートはメインルートを最低1週クリアしないと行けないロックがかかってます。
ネタバレとかとは関係のない「ただの無意味なロック」ではありますが、かといってこれに目くじらを
立てることはないでしょう。

■ゲームの進行関係
体験版をやってみても判りますが、開幕でとんでもない時間のジャンプがあります(笑)が、それ以外は
基本的にはフツーに時間が進み行く感じ。ただ、日付感覚的なものは乏しく、恐らく1週間くらいは
かるく飛んでる部分が多くある、っぽい。ぶっちゃけこのゲーム、日付感覚どころか季節感すら
かなり乏しく、開幕が春であり、そっから夏くらいまでがプレイ期間っぽいのは確かなんですが
そのうちのどこらへんにいるのかがかなり曖昧で類推できない作りになっています。しかしその判然と
しない感じが逆に「なんでもない日常」という意味合いを強めているようにも感じるので、これも
演出的なものなのかな、とも思いました。時間軸があやふやでプレイに支障が出る部分もないですしね。
区切りについてはかなり豊富。ゲームタイトル部分にて章表示が存在する他、非常に多くアイキャッチが
挿入されるゲームなので切りやすさはピカいち。かといってそれらアイキャッチがプレイのテンポを
損ねている具合もないので、なかなか技巧的なアイキャッチではないでしょうか。その他、移動先選択や
ヨルコミ選択などなど、選択肢での止めも易かったりするので、毎日ちょっとずつの、非一気プレイ派でも
かなりハードルの低い作品なのは確かでしょう。

■進行関係システム
これに分類されるシステムはオートとスキップ、選択肢に戻るのバックジャンプの三種類のみ。
この作品においては正直切実に「次の選択肢へ進む」の前方ジャンプがほしかったですね!ないしは
あらすじ形式でもよかったですが・・・共通パートは共通の最初から最後まで各章移動先選択と
ヨルコミ選択で各2度ずつの選択があるため選択肢量は結構多く、また共通のセーブデータもかなり作り難い
構成となっているため、ほぼ毎週最初っからプレイする必要があります。まぁ、スキップは割と早いので
超手間、というほどではないですし、各選択を選ぶごとの話もそれなりにしっかり文字量があり、
二、三行しか文言が変わらないのに好感度だけ変わる、みたいな選択肢のために回収するよりかは
ずっとやりがいもあるのでそういうのよりは圧倒的にマシなのですが・・・
出来ればなんとかしといて欲しかったものですね。

■システム・コンフィグ関係
コンフィグから設定できる項目は必要十分以上、むしろ比較的多めです。特に「動作設定」から設定できる
各種項目は他タイトルでは多く見ないながらもあると便利、みたいなものが揃っていていい感じ。
ショートカットキーなどもそろえられていて、多用なプレイスタイルに対する準備が揃っているのが
伺えるのは好感度が高いです。
ただ、体験版の感想でも書きましたが、PIT周りの調整が殆ど効かないのだけは残念なところですかね。

■デザイン関係
デザインは比較的良い方ではあるも、かなり良い!と諸手を挙げるほどでもなく、くらいでしょうか。
色のバランスやパーツの完成度などは低くはなく、可読性もユーザビリティもちゃんと考えられているのは
見てとれますし、雰囲気を壊さず、かつシンプルで邪魔にならない作りも作品に合っていていいとは
思います。ただ、そのシンプルさが場所によってはツメが甘くて逆に野暮ったい印象になっている部分も
あり、あと一歩の練りこみが欲しいかな、と思いました。

■演出
演出はさほどでもなく。そこそこの数のエモーションエフェクトはありますが、後は立ち絵芸程度ですね。
大きく動くものもなく、エフェクティブなものもないので見ているだけの面白みはさほどでもありません。
ただ、かといって演出力が低いわけでは決してないのですが・・・この辺は詳しくは後述。

■音関係 - 音楽
音楽は合計31曲。内訳はボーカルがOPとEDで2曲と、その他BGMが29曲になります。
主題歌はとくにいい感じ。疾走感と爽快感、明るさのある曲に、透明感強めの霜月はるかさんの
ボーカルという比較的珍しい組み合わせですが、これがかなり素敵なマッチング。聞いてて気持ちイイ。
対してエンディングの方はまま普通な感じでしょうかね。悪くはないですが特記するほどでもなく。
BGMは基本的には平均的な恋愛ADVらしいクセのない曲郡です。作風に合った感じの、非常に明るく、
シリアスなものも含めてそこまで重たくならない曲が多いです。主題歌同様、非常に聞きやすいですね。
一応ブラックな曲もありますが、そもそもブラックなシーンが劇中に殆どないのでかかる頻度はごく僅か。
再生頻度的にはバランス悪く、いっそ勿体無い気すらしますが(笑)まぁ作風として致し方ないでしょう。

■音関係 - 効果音
効果音は超豊富。見た目の演出がさほどでもないのに演出力が低くないというのはまさにこの点から
くるもので、兎に角いろんな音がドタバタと繰り広げられるので耳が楽しいんですね。というかもうこれは
HOOKSOFT作品のお家芸バランスなのだなと感じます。スキップしても楽しいゲーム、というのは
LikeLifeからもうずーっと私の中でHOOKSOFT作品に対して変わらぬイメージです。
しかし今作特にちょっと面白かった効果音は、ちょり先生の「ムカッ」という「声」の効果音。
ちょり先生が怒ると、効果音として「ムカッ」と聞こえるので、スキップしてバックグラウンドで
作業などをしていても「あ、今ちょり先生が怒ってる」と判るという・・・(笑)
声が効果音ってのはなんとも新しいなぁと思いました。

■音関係 - 声優
声優さんについては個人的には問題なく。サブ含め攻略できるヒロインが非常に多い作品ですが、
どのヒロインも役柄に合った感じの声優選択と演技指導で問題はとりたて感じませんでした。聞きづらさや
ミスマッチ感もなく。磐石だと思います。文句なし。

■絵関係 - 全般
原画はもとみやみつき氏、羽鳥ぴよこ氏、松下まかこ氏の三名体制。松下まかこ氏こそ今までずっと
HOOKで絵を描き続けてきた看板絵師の片割れですが、他二名についてはHOOKには初めての人ばかり。
もう一人の看板絵師であるらっこ氏は前作SuGirly Wishの方で原画を張ってたわけですが、今後のHOOKは
この二人を分けて2ラインで使っていくのかしらん?という邪推はさておいて・・・。
三名体制、かつ今までHOOKで絵を描いてない人多めの組み合わせではありますが、なかなかどうして
殆ど違和感を感じることはなく。各人ともちゃんと見ればそれぞれの個性が見て取れますが、かなり
HOOKらしい色使いと線使いで統一されてるのが違和感を巧いこと軽減できているように思います。
全員が全員とも「らしい」萌え絵師であるため、やや人体構造的に不安に思うような部分はありますが
萌え絵としては十分及第点以上のクオリティで出来ていると思います。絵風が嫌いでさえなければ
基本的には非常に受け入れやすく、かつHOOKらしさも込められている良いものではないかと。
またHOOK作品にしてはなかなかHCGのアングルやシチュエーションに工夫を感じられるものもちらちらと。
といってもそういえるのは一部で、大体は普通の萌エロゲーとしての平均くらいではありますが、
今後の発展に期待を持てるところではありました。

ただ・・・ただ、こればっかりはどうにかして欲しかった点が一点。以下、この問題に気づかないで
いられるのであれば出来れば気づかないでいた方がいい問題なので反転にて記述します。

もう兎に角強烈なまでの「薄目症候群」がキツいです。正直この問題で一番例として挙げられる
「るい智」とタメを貼れるレベルで極悪。全登場人物に目を閉じるタイプの立ち絵笑顔があり、
更にその表情の使用頻度も物凄く高いため、一度気づくと印象が非常に抜けにくい。
ぶっちゃけ白い部分を埋めても全然問題に感じないだけに、本気でこれはやめて欲しかったです・・・。


反転終了。重ねて言いますが気付いてないなら読まないほうがいい文章なのでくれぐれも注意。
ある意味ネタバレよりも危険です。

■絵関係 - イベントCG
気を取り直してイベントCGは、枚数にして121枚。原画3名というアドバンテージはありますが
十分以上に枚数としては多めでいい感じ。ちなみに配分としてはメインヒロインズが21~22枚あり、
サブヒロインは後余剰枚数を適当に割った感じです。ただ、メインヒロインについては全ヒロインとも
1枚、イベントCGとはちょっと言いにくいCGが入っているので、実際劇中で使用されるものは
マイナス1で考えた方がいいのですが、まぁそれでも十分な量だとは思います。
強いて言えばキャラ選択やOPムービーなどで使われているSDキャライラストが非常に可愛かったので
あちらでSDイベントCGなんかも足してくれると大変素晴らしかったのですが・・・まぁボリューム的に
これ以上は高望みですかね。いやしかしやっぱり勿体無いなぁ。(笑)
HCGと非HCGの比率はだいたい1:1か、ややHCGの方が多めかな、ってところ。らぶいちゃを全面に
押し出しまくりのタイトルですし、このバランスはちょうどいいくらいでしょう。
差分も必要とされるものは十全にありましたし、絵のボリューム的には大変満足行く感じです。

■絵関係 - 立ち絵
まずメインヒロインの立ち絵は基本ポーズパターンが2(何故か愛姫のみ制服衣装のみの3番目あり)、
衣装差分が制服・私服・パジャマ・バスタオル・全裸が共通かな?みかもにだけは何故かスク水がある
謎の優遇がありますが。他、サブキャラはすずめとちょり先生、たんぽぽのポーズパターンが2。
生徒会の二人、上級生Cは1。衣装はだいたいメインヒロインよりちょいちょい削られてる感じです。
キャラクターが多いことを考慮すれば十分以上の量ではないかと思います。ややひっかかるのは
すずめはまだ現状攻略できないのに、既に攻略できる生徒会ズよりも立ち絵が優遇されてるのは
なんか違和感を感じますが・・・(笑)
後はやはり体験版感想でも書きましたが、ちょっとだけ気持ちデフォの立ち絵サイズが小さめです。
慣れてくると気にならないですし、恐らく1画面にヒロインズが集合する場面が多い手前、
このサイズじゃないと入りきらないのが所以かと思いますが、逆にサシでの会話などの場合は
アップで会話しないとちょっと画面が寂しい印象を受けてしまいます。
基本画面サイズがもう一回り大きい1280のワイドサイズのほうがよかったのかも、と思ったり。

■話関係 - キャラクター全般
キャラクターについて。まずはヒロインズについては、一言で言えば、判りやすく、チョロい。(笑)
今作のヒロインズはちゃんと出会いこそ描いていますが地道に好感度を上げていたはずの時代を
前述の通り体験版レベルの序盤でブッ飛ばし、主人公がヒロインを胃袋から掴みこんで
好感度MAXにしてから本編がスタートするので、①まず殆どのヒロインとは出会って間もない間柄のため
過去というしがらみが(元幼馴染の愛姫以外)なく、②それでいてほとんどあと一歩背中を押すだけで
落ちるほど好感度が高いため、主人公の行動にガンガンメロメロになる、という二つの理由から
非常にユーザーからすれば「都合のいいヒロイン」になっています。
麻薬的で何も考えずに脳汁出してニヤケられる女の子たちですね。そのため娯楽を享受するための
ハードルは恐ろしく低め。ただそれとは別に、後半のシリアスのために用意しているヒロインの
「軸」についてもちゃんと設定されてはいるのですが、それらはヒロインの萌え部分とは
かなり明確に切り離されているため、ルートに入るまで殆ど意識する必要がないように作られているのも
なんとも割り切りとバランスの舵取りが面白いとこだなと思います。

■話関係 - 主人公
そしてそんなヒロインズを、逆に言えばたった一年で骨抜きにまで調理してしまった主人公は
なんかもうどうしようもないくらい完璧に「エロゲ主人公的イケメン」。あらゆる部分のスペックが
高すぎない程度にハイスペックで、かつ女性的気配りと男性的行動力を併せ持つ、なんだか中二病の
夢が具現化したかのようなかなりフィクションチックな主人公。それ故見ていてすがすがしく、
ハイスペックなヒロインズとくっつくことに違和感を感じないのはいいことである反面、
絵空事じみすぎたキャラが感情移入という点からするとやや阻害されがちなデメリットもあり。
また、このハーレム状態を維持するために必要な点ではありますが、かなりのニブチンなのも少々
今の時代からすると逆行気味の属性ではあるかと思います。
何も考えずに楽しむ分には理想的ですが、深く考えると人によってはちょいとばかし
好き嫌いの分かれるキャラかもしれませんね。

■話関係 - テキスト
シナリオライターは雪仁氏。以前はSMEEのメインライターである早瀬氏とともに「ラブラブル」の
シナリオライターでもあった氏なだけあり、ギャグテンポや流れ、キャラの感情表現などで
あちらと非常に近しいものを感じられます。かなりライトでキャッチーで、今時のエロゲーらしく
読みやすく敷居は低いですね。ただラブラブルとやや違うのは、あちらがギャグもラブもハイテンション
爆走スタイルなのに対し、こちらはある程度韻を踏みながらリズムをしっかり取り、ペースとしても
ややゆったりと、優しさを感じるものになっています。どちらが好みとなるかは人に寄りそうですが
あちらよりは個性にクセがない分プレーンよりで人は選ばないものになっているかと。
表現の齟齬や矛盾なども少なく、平均以上の読み味ではあると思います。

■話関係 - シナリオ
基本的にはらぶらぶできることが最前提。共通パートでは主人公を取り囲むヒロインズが女の子同士で、
あるいは主人公とキャッキャウフフしてるのをニヤニヤ眺め、共通内各種選択では嬉しはずかし
愛を育み、個別序盤ではより親密になるためのストーリーを、そして個別最終では恋愛を経て成長した
二人が某かのハードルを越えて愛し合う。ま、流れとしては非常に王道ですね。
内容としてはやはり大きく比重を恋愛部分とらぶいちゃに裂いており、余計な不純物を可能な限り
取り除いた、あざとくも甘酸っぱくてきゅんとするような友達以上恋人未満も、それが恋愛に昇華する
過程も、付き合ってからのバカップルエピソードもしっかりてんこ盛りで搭載されているため
このゲームを求める層に対するストーリーとしてはかなり十全なものだと思います。
強いてあげるのであれば、最後のシリアスがキャラの項で上げた通り、あまりそれ以前に強く意識を
させることのない問題を急激にぐっと持ち上げてくるため、やや唐突かつスピード解決してしまうような
ところが「お話」としては物足りなくはあるかも。ただ、HOOKのゲームらしく、どのルートも
各ヒロインと主人公がしっかり成長して答えや行動を示すところもありますし、「恋愛」という
感情に対するメーカーのスタンスも平均に横並びでないので個人的にはその面白さで問題としては
十分相殺できるかな、とも思うのですが。感じ方次第なトコではあるでしょう。

■最後にPITについて
しかしてここで終わらないのが本作の面白いところでもあり問題でもあり。
この作品には本作を大きく印象づけるシステムとして「PIT」の存在があります。
まずPITというのは作中にて学生に配布される情報端末の総称です。本作ではこの端末を利用して
学生同士のメールのやりとりや、集まっての掲示板でのやりとりのほか、ラジオや電話などにも
活用できる、という設定になっているのですが、このゲームのシステムとして本作ではユーザーが
好きなタイミングでこれら機能のうち「掲示板」と「メール」を見れるようになっているのが大きな
特徴となっているのですが。
これがなんともゲームを良くも、そして悪くもしてくれています。

まず掲示板については、作中の主人公の動向を第三者視点でやんややんや匿名掲示板のノリで
言い合うのを見れるというのが面白み。SMEEの「ラブラブル」で演出した
「主人公の内なる叫びの共感性」を、主人公とヒロインの接触とハーレム体質を阻害せずに両立できるよう
外的に分離・発展させてみたのかなーなんて邪推しましたが・・・。置いといて、あるいち側面では
主人公に入り込んでヒロインの笑顔を一身に浴びつつも、その一方で2chのようなノリで主人公の
ハーレム体質をうらやましがったり、ヒロインの可愛さを共有したりするのを同時進行で楽しめるという
贅沢な構成はなかなか面白いです。また新しい側面でストーリーが追えるなどの可能性もあり、
かなり興味深い工夫となっています。

ただ、逆に言えばその分離によりプレイヤーの視点が主体とも客体ともつかない非常に曖昧なものに
なってしまうことによる物語への入り込みにくさという問題が浮き上がってしまうという問題はあり。
加えてもっと直接的な問題で言えば、その主体と客体、どちらかに極度に感情移入した
場合も、主人公側、PIT側どちらからとも、お互いを見た時の印象はどちらかというと邪魔な相手と
なってしまっている為、プレイヤーによっては最初からこの構図事態を不快に思うかも、という問題も。

続いてメールの方は、事前の選択肢で選んだヒロインから、ある一定のタイミングでちょこちょこと
メールが来る、というだけのもの。これについては正直大したことはなく、ホントにただメールが
届くだけなので、おまけのもの、という程度の感覚でいいと思います。
同様にメールが届くゲームというとこれまたラブラブルを思い出しますが、あちらのように返信などの
アクションが起こせない分いまいち面白みは薄い点ではあるように思いました。

そして掲示板・メールどちらにも言える最大の問題は、ユーザビリティ。
まず兎に角過去ログが読めません。掲示板は各章ごとにリセットされ、メールも次のものが届くと
以前のものが読めなくなってしまいます。これらはクリア後のエクストラで補完することは可能なものの
プレイ中は一度読み逃すとクリアまでずっと読むことができず、特にリセット直前の文章は
かなり読み逃しやすく、逃さないようにプレイするとかなり気を取られます。これについては正直、
体験版や雑誌記事のスクリーンショットでは過去ログが読める構造っぽい画面構成だったのが
製品版になって消えてしまったので、どうもシステム的に間に合わなかったか問題があったかで
発売前になってオミットされたような雰囲気を感じます。これは本当に単純に残念な部分。
また、掲示板はリアルタイムでガンガン更新されるため、ストーリーと平行同時に追おうとすると
かなり集中してのプレイを阻害されるのも大きな問題の一つ。かといって過去ログも上記理由によりあまり
頼れないため、プレイ中は今ひとつ意識が散ってしまいがちです。加えて掲示板自体のスクロールなどの
操作性が悪いのもスムーズさを損ねる部分ですね。これら要因が複合することにより、ゲーム前半では
笑って楽しんでた掲示板が、ゲームを長くやればやるほど「面倒くさく」感じてしまうやもという問題も。
更にはこの点がゲームの一つの美点である「テキストテンポのよさ」をかなり殺してしまっているのも
決して無視できない大きな問題の一つだと言えるでしょう。

かなり面白いシステムであることは確かな「PIT」でしたが、やはりどうにも色々と問題も多く、
それらを洗い出した上で再度の煮詰めをしないことにはまだ完成した新たないち要素とは
言えないか、というとこでしょうかね。



以上でございます。
基本的にはかなり美味しい萌えらぶいちゃゲー、なのだとは思います。その十分すぎるほど
ボリューミーな量はまずそれだけでかなり満足度の高いものですし、それらを彩る各種要素についても
殆どは平均かそれ以上の十分合格ラインを超える出来のものばかりだったので、大きく加点できる部分も
そう多くはないまでも、逆に大きく減点するような部分もそれ以上に多くはないでしょう。

ただそこに大きく一石を投じ、完成度に大波紋を起こしているのはやはりPITという要素の存在。
それ自体のアイディアと工夫はかなり他に代え難い面白いものではあると思います。とはいえしかし
システム的なものにしろ、ゲームとの親和性、刷り合わせの問題にしろまだまだ煮詰めが足りない部分は
かなり多いだけに、どうしても評価としては他要素を巻き込んでの乱高下をせざるを
得ないところではあるでしょう。

までも、こういうゲームを作るのは非常にHOOKらしいかな、とも思ったり。
思えばOrange Pocketの時間制限付き選択肢とかから既にこういう傾向ありましたしね!(笑)
しかし出来ればこのシステムは続けて発展と追求をしてみてほしいところではあります。
間違いなく一回で捨ててしまうには惜しいアイディアだと思います。
まぁ、これまたいつものHOOKを考えると、すぐに新しいシステムや工夫を次から次へと出しては捨ての
流れの方が多いだけにあまり期待はできないかなぁ、とも思いますが・・・
細々とでも望みは捨てずに楽しみにしておきたいところです。


ではでは最後に本作オススメユーザーについて。
まずは「萌えラブイチャゲーが好きな人」に加えて「新しい・珍しいもの好きの人」で!
基本的には間口の広いゲームです。それに加えて、ただの萌えゲーとはちょいと違った
プレイ感のあるゲームが好き、って人には是非ともプレイして、そして賛否を見極めてみてくださいな。
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