September 30, 2011

『ユユカナ』応援中!

 タイトル
 ユユカナ -Under the Starlight-
 メーカー
 NaNaWind
 発売日  2011年9月22日
 原画  Mitha  シナリオ  葉月サイ/樹多裕一
 池田コント/shuno
 評価
 68点(100点満点中)

TGL系新ブランド、NaNaWindの処女作はちょっと伝奇ファンタジーの要素が入ったオーソドックスな
学園恋愛萌えゲー。TGL系列の新ブランドというとここ数年は同人サークルからの青田買いブランド、
というのがそろそろ定着しているように感じますが、このメーカーもご多分に漏れずそのクチだそうで
ルナSystemってところがが由来みたいですね。
ただその多くの同人上がりメーカーと比べ、元々MOONSTONE作品でそれなり以上に名のある
Mitha氏原画という点、そしてその絵をちゃんと引き立てられているしっかりした塗り、そして
公式サイト、体験版などで見られる非常にかっちりした商業らしいデザインなど、これはなかなか
化けてるんじゃないかしら?と博打ながらも可能性を感じておりました。

そんな読みはほどほどに当たり、ほどほどに外れか。
最初から見えていたよさげな点に関してはそのままいい感じで。原画の質と絵の綺麗さ、共に
期待通りの出来でしたし、デザインや演出などもしっかりしていたので見栄えの良さという意味では
それなりに高めの評価が出来るのは間違いないでしょう。
しかし残念ながらその良さに対して全く応じきれていないのがシナリオとキャラクター。
体験版部分では若干の垢抜けなさはあるもののキャラは王道っぽくわかりやすく、話の方も
ほどほどに引きもあり不思議要素のそれっぽさも雰囲気が出ていて悪くなかった・・・と思ったのですが、
残念ながら進むにつれて、特に個別ルートに入っていくと垢抜けないでは片付けられないほど微妙な点が
多様に噴出。折角の不思議要素は料理の仕方次第では面白くなった気がするのですが、伏線が段々
おざなりになる上にどのルートも似通ったような展開で周回の面白さが殆どなく。
またキャラクターについても特に主人公を筆頭に魅力より粗が目立ってしまうところが多くて
特にひきつけられるようなものもなく。
正直テキストが全てを駄目にしてる典型的ないまいちゲーだと言ってしまって良さそうです。


以下長文感想。



総プレイボリュームは私で18時間ほど。共通ルートと、個別ルートがヒロイン4名で4ルート。
あんまり長いものではないですね。正直、この分量なら響さんルートがあってやっと適正量だった気がする・・・。
共通と個別の分量配分はそれなりにバランスは悪くないのですが、共通部分は日常の一コマをちょこちょこ
切り取ってつなげるような描写の連続で正直存在意義がイマイチ。同じようなストーリー運びとしては
グリザイアに少し近いのですが、あちらは1エピソードの面白さも伏線の張り方や個別への連携も
自然だったのでまるで別物ですね。
ルートロックは特にナシ。ルート相互でのネタバレもとりたててない・・・というか
突入するルートがAなら、その時点でB~Dの他ルートにおける主人公とヒロインの過去や思い出などが
ほぼなかったこと同然になるというなんとも斜め上の話の構成なのでネタバレになろうはずもなく。
しかし、「はずもない」・・・はずなのですが、序文でも書いたとおり全ルート共に話運びが殆ど
似通った構成なので、ヒロインの首や過去の出来事をチョイチョイ挿げ替えただけの同じ展開が
2週目以降も続くようなものなので、ある意味でいえば1週やったら他のルートのネタバレを見たも同然とも
いえてしまうかもしれません。どうしてこうなったかなぁマジで。
攻略については大して難しくは無く。選択肢はいくつかありますが実質4人の中から1人を選ぶタイプの
選択肢が2、3回あり、それがほぼ全てを決定付けているように感じました。

ゲームの進行関係。基本的には日付の通りに。一応数日時間が飛ぶこともありますが、殆どの場合は
一日一日を普通に進んでいきます。日を跨ぐごとにカレンダー入りのアイキャッチも入る他、
話の中で場所移動を行うと移動した先で場所名表示と一緒に日付も表示されるという
親切なポップアップがあるので時間軸把握は非常に容易。まぁ、元々話自体も体感時間でどうこうなるほど
ややこしさは内包されてはいないのですが。
他、場面転換のワイプも比較的種類が多くゆったりしているのもあって、ゲームの区切り所に
なりそうな部分は多彩。展開のユルさもあって、日を跨いでのまったりプレイなどもしやすいとは思います。

進行関係のシステムについては昨今の平均な感じか。オート、スキップと、選択肢の前後が可能です。
スキップ速度はかなり早いですし未読既読もちゃんと切り替えられるのでシステムとしては問題なし。
ただ既読判定に甘い、というか手抜きじみたところがあり、個別の中にいくつか部分的な共通パートが
若干あるのですが、これが全くスキップ不可能です。この部分共通にはそれなりに長い部分もあるので
面倒に思うとENTER押し下げや未読スキップで飛ばさねばならず、そのままつい本当の未読部分まで
読み飛ばしてしまうようなことが多々あり、なかなか困りました。横着しないでちゃんと判定して欲しかった。
また、次の選択肢に進む・前に戻るのシステムについてはメイン画面中に右クリック二回で
メニューを出さなければ使うことができず、テキストウインドウのボタンワンタッチ、とはいかないので
若干ワンテンポの焦れがあるのがぷちストレスかも。ボタンが欲しかったですね。

次にシステム全体について。こちらはほぼ不便のないシステムになってます。
最近必要となる設定項目は大体触ることができるでしょう。また、体験版でも触れましたが
デフォルトで埋め込まれてるフォントが六種類あるので、ちゃんと作風に合わせた、あるいは
自分の好みとメーカーからの作風提示の間を模索できるのは特筆してよいところかと。
フォント自体の描画性能も高く、自分で持ってるフォントも勿論設定できるのでこの自由度もいいですね。
少し残念なところと言えば、先の選択肢移動ボタンの話同様、画面移動にしろ何にしろちょっとした
動きや間が仕込まれている部分が多いので、素早く移動し素早く調整、というのに少し不向きなところは
利便性という点でマイナスだったかな、とは思います。

デザインについては序文でも触れたとおり見た目としては大変よい出来。昨今のウェブデザインの流行を
取り入れたようなボタンデザインは見やすいですし、色バランスの取り方やセンスなども大変高いので
非常に作りとしてしっかりしていて見ていての安心感があります。
可読性についても若干文字の大きさが小さすぎるきらいはありますが概ね問題はないでしょう。
ただ一点残念だったのが、システム・テキスト・BGM全ての「詳細設定」ボタンがちょっと小さくて
わかりにくいところ。「非アク時動作」「確認メッセージ」「スキップ速度」「文字描画詳細」
「クリックボイスカット」など、特に最近必要性の高まっている設定項目がこの詳細部分に
つめこまれている場合が多いので、もしかすると見た目でこれらが調整できることが
気づいていない人がいるかもしれません。もうちょっとしっかり強調しておくべきだったかも。

演出について。
平均以上の動きはあると思います。体験版の感想でも書きましたが、感情エフェクトなどが
ちょっと特殊な動きのアニメーションをしたりと若干同人上がりらしい個性の強さを感じる部分がありますが
さりとて悪いものではなく。それらエモーションに加え、あこの使うお札の雷などのエフェクト、先でも述べた
多種多様なワイプや画面効果など、種類についてはそれなり以上に頑張っているように思いました。
ただ、これら演出は後半ちょっと量的に減ってたかな、とは少々。体験版部分ではガンガン動いてたものが
後半になると息切れパワーダウンで紙芝居に、なんてゲームは結構よくありますが、こちらも
その類に残念ながら区分けされてしまうか。完全に無くなるってほどではないんですが、しかしもうちょっと
全体的にバランスよく注力して欲しかったですね。

音周りについて。まずは音楽から。
BGMはサウンドモード表示で51曲、差分的な曲を差し引いても49曲とかなり膨大な量。
それに対してボーカル曲は主題歌の1曲のみでエンディングテーマなどもなし、とこちらは物足りない感は
ありますが、曲数だけで言えばかなり贅沢な感じ。BGM自体についても曲自体の質も悪くない、
どころかちゃんと個性もあってサントラにしても聞ける出来ですし、雰囲気の味付けにも見た目と並んで
かなり貢献しているなかなか良いものです。また、流石にこれだけ曲数多いと再生頻度に大きな差が出て
覚えの悪いものがありそうなものですが、意外とそんなこともなく。
この点については基本的にほぼ手放しで褒めてしまってよさそうに思いました。

大して効果音についてはほどほど。エモーションエフェクトなどにも効果音がついているので
それなりに多様性はありますが、さりとてモノ自体はそれほどものめずらしいものも無く。
必要十分の範囲だったのではないでしょうか。

声優さんについてはほぼ鉄板ですね。かなりベテランさんで固められている感じがあって、演技の方には
ほぼ不安な点はなく。ただ、姫園@岩泉まいさんだけは同じベテランでも毛色の違いがあるかも。
演技の方向性についても少し違和感あり。最後までいまいち乗り切れなかった感が。
また同じく方向性というかキャラマッチングではあこ@まきいづみさんも個人的には微妙だったかな・・・と。
まきいづみさんはやっぱりおっとり系の方が合うなぁ、と思ってしまう次第です。

絵について。原画は序文でも触れたとおりMitha氏の単独原画。
こちらの絵の質についてはとりたてて文句はないでしょう。MOONSTONEで超王道ど真ん中の萌えゲーを
描き続けてきた氏の絵ですし、可愛さや萌えという点においてはまさに求められている正道を
しっかり押さえたソツのない出来。強いて言えば最近は萌えの中にもエロが求められがちなだけに
少しそっちのベクトルはまだ弱いかな、と思わなくもないですが、しかし贅沢な訴求でしょう。
塗りの質もかなり高く、よくぞまぁこんな彩度の高いマゼンタやブルーを他用して破綻しないもんだ、と
言わんばかりの絶妙な技術力は高く評価したいですね。印刷物とか大変だっただろうなぁ(笑)
加えてSD原画にはいずみ由羅氏。こちらSD原画として商業作品に出てきたのは初めてですかね?
こちらもこれまたこの作品にばっちり合ったSD絵でまったく問題なしです。かなり可愛らしいデフォルメで
この魅力は年内の作品のSD絵のなかでも十分上位で渡り合える魅力があります。
雷で怯えてる姫園絵とかむちゃくちゃ可愛いですね。

イベントCGについて。残念ながら絵の質自体の高さとは違い、こちらの量的問題は総数こそ86枚と平均的に
見えますが、うちちゃんとしたイベントCGは78枚に、SD絵が8枚という割合の上、全ヒロインの枠に登録される上
女の子の絵ですらない絵が一種類存在するので実質本来の意味のイベントCGは74枚です。
つまるところボリュームとしてはかなり今ひとつ。更にいえば枚数自体にも多少の偏りがあり、
ほのか>姫園>あこ>くーちゃんの順番で1~2枚ずつ少なくなります。
これはもう完全に物足りないのレベルと言わざるを得ないか。
差分についてはそれなりに多くあるのでスチル表示中の不足感はそんなにないですし、
イベントCG自体個別に入ってからの表示に偏っているため、共通部分がずっと紙芝居の代わりに
後半は結構ポンポン絵がでてくるな、なんて印象になります。
HCG:非HCGの比率は半々よりちょいエロ寄り。シーン単位でのH数は各ヒロインともに3回。回数としては
少なくないものの1シーンの内容が割と薄いものがまま入っており、そういった意味での満足度は
さほどに高くありません。

立ち絵について。メインヒロインは各ヒロインともポーズ3パターンに、制服と、私服と、水着が完備かな?
全裸立ち絵もあるっぽいんですが、基本肩から上くらいでしか使われないので完全な絵としてはないのかも。
一応この4人についてはさしたる不足を感じないですね。表情も意外と細かいものまで用意されているので
表現に不足があったようにはあまり感じませんでした。他サブキャラについては、響と現司、夜宵さん、それと
生徒会の女性メンバーが2ポーズずつで、他は1つずつ。衣装差分はあったりなかったりです。
というわけで量的には基本問題ないんですが・・・本作立ち絵最大の問題は、何故かその劇中場面の殆どで
登場キャラクターが制服ばっか着てるということ。明らかに土日祝日のお休みでさえ制服で活動してる場面すら
あり、個別に入るまでは殆ど私服を見ることができません。共通パートで唯一見ることが出来るのは
メンバーで海に行く、という時「だけ」ですね。しかも行き帰りの移動時のみで海に居る間は水着なので
実質数クリックで消えていくという。個別に入れば流石にちょこちょこと出てくるようにはなるんですが
ほのかのルートなどは個別でも制服でいる場面が多く、とにかく同じ制服ばっか着てる印象が強かったです。
なんでこんな指定にしてしまったのか、よくわからない・・・。

そして続いてキャラクター。
ヒロインズに関してはホントに王道ど真ん中のヒロイン図です。いや、若干古臭いかもしれないかな?
見た目通りというかなんというか、MOONSTONEのGiftだとか、それからCircusの初期作品なんかに
ヒロインの味付けは近いと思います。約束されたエロゲーヒロイン、という感じ。
それ故どこに萌えればいいかなどのわかりやすさは随一なので軽く魅力に触れる分には凄く敷居が
低いのですが、悪く言えばチープでありきたり、まったくサプライズやインパクトはなく覚えは悪いです。
加えて残念ながら設定の地盤も弱く、更にはゲームボリュームの項で触れたとおり各キャラの
個別ルートに入ると他ヒロインの過去がなかったことになるという謎仕様のお陰でキャラの言動や行動、
考え方がかなり根底の部分でズレたりブレたりすることがあり、やってて今一つ深く愛でるような気持ちに
なれません。逆にサブキャラについてはそうでもなく、現司と夜宵さん、先生については
役割がしっかりしているためとりたてブレることがなく、それ以外は特定キャラルートでのみ登場頻度が
上がるようなキャラが多い故、ブレる暇がないためしっかりして見えるので、コッチの方がよほど魅力的。
響と生徒会役員と夜宵さんがヒロインの作品の方がよほど見たいと思ってしまいました(笑)

そしてキャラクター中最低のキャラがなんといっても主人公。今年プレイしているタイトルの中でも一番の
不快主人公ですね。スペックも高いんだか低いんだかよくわからず、ウルトラ鈍感で性格にもいまひとつ
一貫性がなく、責任感や誠実さも大して感じられず、なんでこの主人公が好かれるのか理由が全く
思い浮かばない基本魅力がさっぱりない主人公です。ヒロインとは過去の繋がりだけで食いつないで
いるようなイメージ。加えて状況対応能力が悪く、更に女の子の視線どころか作品の伏線にまで鈍感で
「あれだけあからさまに思わせぶりのヒントがあったのになんで気付かないんだこいつ」とプレイヤーが
イライラすることしばし。ぶっちゃけバカにしか見えません。昨今でこれほど不味いな主人公は
逆に珍しいですね。かなりのマイナス部。

テキストについて。基本、読み味は無色に近く、読み進めることに対してひっかかりを覚えることは
あんまりないプレーンなテキストだとは思います。が、ときたま同人上がりらしい、ちょっと商業では
使わないかな、という背筋がくすぐったくなるような表現はあり。といっても殆どの場面ではフツーの
文章です。淡々としていてあまり特筆できるようなことはないものといえるでしょう。
ギャグ方面についてはイマイチすべり気味。中途半端なパロディやオマージュがぽつぽつ出てくる程度。
一番のムードメーカー役だと思われる悪友ポジションの現司についても、よくあるスケベで女好きのキャラを
生かしズッコけるような使い方をされますが、ちょっと過剰かつ鬱陶しいレベルまで弄られていて
人によっては笑いよりも不快の感情の方が浮かぶかもしれません。

そしてシナリオ。
こちらのストーリーにしてもキャラクター同様、MOONSTONEやCircusを彷彿とするような話運びですね。
なんというかGiftとD.C.の中間どころ、という感じ。元々GiftはD.C.と近いだろ、と言われそうですが(笑)
しかし本当にそんな塩梅で。基本、美少女転校生がやってきたことで主人公の回りで主人公を狙ってた
ヒロインや新たな下級生なども合わせてどたばたしながらラブコメしていき、くっついたヒロインと
過去の因縁じみた約束に振り回されつつも先を目指す、という正にこの業界の王道エロゲーストーリー。
しかし残念ながらそれら先達と比べるには失礼なほどモノの質としてはかなりイマイチ。やはりなんといっても、
ここまでで何度も述べた「個別に入ると他ヒロインの過去がなかったことになる」このご都合がかなり物語から
深みを奪い、チープにしてしまっています。それでいて加えてどのルートも展開の差が殆どないことや、
話の動きにかなりご都合主義的なものが見られるのもマイナスでしょう。主人公がダメすぎて
恋愛沙汰における物心の揺れ動きも説得力がないし、ほんとに惰性で物語が動く感じです。
体こそなしてはいますが、ほめどころは正直思い返しても思いつかないですね・・・。



以上。
とにかくストーリー、というかテキスト全般が全てにおいて足を引っ張って点数を下げまくった印象です。
原画、音楽、デザインなどの良さは無駄遣いに終わってしまったと言っても過言ではないでしょう。とにかく
テキストに関してはとことん誉められない感じ。ただ、誉められないだけでチープながらとりあえず
形になってるのでとんでもなくどうしようもない、クリア前にギブアップするほど強烈なマイナスではなく、
いまいち全力で「こいつぁダメだ!」と叫びきれない微妙なさじ加減のイマイチさだったのが余計なんか
がっくりきますね(笑)

しかしとはいえ、その無駄遣いに終わってしまった各種要素の出来の良さはちゃんと忘れてはいけない
ものではあり。ちょぼちょぼどの要素も微妙なところはありましたが、それ以上に光るところの方が
多かったのは確かなので、この辺はしっかり維持したまま、シナリオだけどうにかすれば
劇的に出来のいいものが作れるようになると思います。・・・まぁ、そういうメーカーは他にもないわけでは
ないのですが、しかし処女作でこれなら十分アドバンテージはあると思いますので。
是非とも頑張ってほしいものです。


というわけで本作のオススメユーザー!
「見た目重視、Mithaさんの絵やいずみ由羅氏のSD絵を筆頭に、とにかく見た目が気に入った人」のみで!
まぁつまり、ぶっちゃけ急がないのであればビジュアルファンブックとか出るのを待ったほうが
いい、かも、しれない(笑)
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