March 21, 2011

『With Ribbon(ウィズリボン)』応援中!

タイトル
 With Ribbon
 メーカー
 Hulotte
 発売日  2011年2月25日
 原画  池上茜  シナリオ  今臣なると
 評価
 78点(100点満点中)

新規メーカー"Hulotte"の第一弾タイトルは、母親探しアドベンチャーと題して、未来からやってきた娘と
自分の嫁をタイムリープしながら探していく恋愛アドベンチャー。パッと目立ったところこそ今一つ
なかったものの、その「未来から娘がやってくる」という比較的奇抜でバクチ気味な設定の興味深さと、
公開された体験版から感じられる作品としての全体的な完成度のそこそこな高さもあって、これは意外と
外れない、ないしヘタすれば化けるのではと期待のかけられるタイトルとしてみておりました。
1月から伸びてしまったので大分プレイするのは後ろに下がってしまいましたが・・・(笑)

で、その可能性の振れ幅の大きさはどう落ち着いたかと言えば・・・まさに「落ち着いた」という表現が
マッチするような、なんともかんともとにかく無難な出来で。全体的にどの要素にしろ、特筆してココが凄いと
言えることこそないものの、しかし客観的に見て大きなマイナスだと言える部分は殆ど無く、絵にしろ
システムにしろ音楽にしろ、各種要素は少なくとも合格点台だとはいえるでしょう。
内容についてもそこそこ萌えられてそこそこ面白くて、かつ大きな作品としての見所に「自分の娘」という
珍しい要素もあり、決して悪いわけではないはずなのですが、どことなく手放しで褒めにくい
中途半端さが見受けられてしまい、均してしまうとやはり「無難かな」と落ち着いてしまう印象が。
平均が高い合格点で纏まっているタイトルというと昨年の「ぶるくす」や「あまつみ」を思い出しますが、
なんというかあれよりもどことなく全体的に控えめな印象。同じバランス型なのですが、後一歩
トータルでの優等生というには物足りないかなぁと感じる作品でした。

というわけで、とりたてて誰に勧めると言いにくいタイトルではあるのですが、しかし間違いなく悪いと断じる
作品ではないので、手を出してもそんなに損はしないはずとも思えるタイトルです。
とりあえず萌えゲーマーでさえあれば、例えば「気になるんだよね」といわれたら「いいんじゃないかな?」と
軽く返せるような、そんな作品だと思います。

・・・我ながら褒めてるんだかなんなんだかよくわからないな(笑)


以下長文感想。



ゲームボリュームは大体20時間超ほどでしょうか。ヒロインは4名+サブヒロイン扱いの子が1名の
合計5ルート。サブヒロイン扱いである華澄は勿論のこと、全ヒロイン微妙にプレイボリュームに差があるので
一概に個別でどれくらいかかる・・・とは言いにくい感じ。共通パートは体験版で一週目が出来る、所謂
ヒロインとキスをするまでの三日間のループ部分。基本的にはヒロインは選択肢でそのキャラに近いのだけ
選んでいけば攻略できるのですが、沙蘭と澄香(と、そこから派生する華澄)は少しその条件がシビアな
ようで、彼女らと関係ないと思いそうな選択肢までフラグになっているらしく、正解ルートから1,2個でも
間違えるとあっさり再ループしてしまうので結構難易度が高いです。面倒な人は最初から
攻略ページなどに頼るのもアリかもしれません。

ゲームの進行関係。
共通部分はその三日間で普通に日付どおりに進みますが、個別に入ると簡単に数日、どころか
数週間くらい軽くスキップします。が、まぁ文中で表現されますし、日付自体は常時画面の左上に
表示されているので、時間軸の混乱はそうそう起きないと思います。話も難しいわけではないですし。
区切り演出はアイキャッチ。日付転換の他、場面、話題転換などでも比較的頻繁にヒロインや
サブキャラのアイキャッチが入ります。ので、セーブ休憩などは比較的取りやすいです。
どちらかというと問題なのは共通部分の構成そのものか。ループものにありがちな話ではあるのですが、
同じ日々を繰り返しはするものの、それが何週目かでテキストの未読・既読判定が変わるので
共通攻略中は最後のルートまで何度も同じテキストを読まされる覚悟が必要です。また、基本的に
どのヒロインも最速3週目で攻略できるようになっていますが、それまでにうまいこといかなければ
当然4週目、5週目と突入します。で、しかもどうやら4週目くらいまでは専用テキストが用意されている
模様なので、周回失敗後もやっぱりスキップの頻繁な停止には悩まされるでしょう。
正直この作品には「次の選択肢までスキップ」と「前の選択肢まで戻る」が欲しかったですね。
スキップ自体も大して早くはないことや、上述した「難しいルート」の問題もあり、ぶっちゃけ攻略は
週を追うごとにどんどんめんどくさくなっていきます。(笑)

システムについて。項目周りについては基本に忠実に、大して多くは無く・・・というか、フルプライスにしては
むしろ少ない方かも。細かい所までは大して設定できることはないですし、できる項目についても
ON/OFF切り替えのものが多いです。また、1280*720の大画面ゲーですが低解像度に対する
ケアがないのが残念と言えば残念やも。「必要条件」として挙げられていたものではあるのですが。
ちなみに多分最後までプレイしても殆どの人が気付いてない可能性があるネタとして、システムボイスが
男友達の榎戸にも存在しているのですが、デフォルトでさりげなくOFFにされています。
泣ける話やで・・・(笑)
デザイン的な方はまったく問題なく。全体的に可愛らしく、学園モノ的な色調と雰囲気でまとまっていて
見ててなかなか華とセンスを感じます。コンフィグ周りを中心に、特徴的な手書きっぽいフォントを
使用していますが、可読性などにも難を感じるところはなく、しっかりしている印象。
ボタンのマウスオーバーや押しやすさなども問題なく、これは特に問題に挙げるところはないでしょう。

演出。といっても、目だって演出と呼べるようなあれやこれやは殆ど無く。感情エフェクトだとか、
動く背景だとか、テキストウィンドウ弄りだとか、そういうものは基本ありません。感情系のマークは
一応キャラによっては立ち絵自体に同梱されてたりしますが・・・まぁその程度ですね。なので、基本的に
そうと呼べそうなものは立ち絵芸くらいでしょう。ただ、この立ち絵芸がなかなか秀逸で、文章同期こそ
してはいないものの、動きが非常に自然かつ多彩。距離感の演出だけでなく、キャラが動く、跳ねる、
揺れる・・・などなど、そういったものの緩急の取り方が巧いので、これだけでも結構画面が華やかで
見てて楽しめるものにはなっているので、あまり絵面が寂しい印象にはなってません。
ゲーム自体もドタバタラブコメという程ワイワイしている作品でもないので気にはならない・・・ところでは
ありますが、しかしトータルで言えばもうちょっと頑張って貰ってもよかった気はします。

音周りについて。音楽はボーカルがOP/EDの2曲に、各攻略ヒロインテーマソングが6曲ととても潤沢。
初回版に同梱されているキャラソンCDにははるかのものも存在しますが、劇中には入ってません。
加えてBGMはOP/EDのインストもあわせて27曲。こちらも決して少なくはない量ですね。
曲自体も・・・さすがにヒロインズのキャラソンは声優さんが歌っているものなので、本業アーティストさんの
歌には敵いませんが(笑)ボーカル曲はOP/EDはDuca氏なのでその巧さは当然ガチ。
BGMの方もエロゲ業界どころではないかなり広い世界で活躍されているPeak A Soul+のものなので
クオリティは非常に高いです。とはいってもこれといって印象的な曲があったり、作風に合わせた個性的な
曲があるとかそういう感じはあまりなく、「良いBGM」というのを地でいっているような雰囲気が強いです。
シーンごとの選曲や曲の切り替えも自然で、こちらも文句無しです。

効果音。こちらは潤沢でかなり色々な音がある・・・のはいいんですが。まずそもそも効果音自体が
結構うるさい。これだけなら音量調整でどうとでもなるんですが、いやに耳に残ってしまう効果音が多いのが
個人的にかなり気になりました。特に陽奈の腹の音。ヒロインの女の子のお腹の音とは思えない、
はっきりいって全く可愛げのない(笑)音であり、かつかなり連続して鳴りまくるのがカナリきついです。
あと気になったのはガヤ。こちらもうるさいってのがまず第一に来ますが、加えてガヤなのにはっきりと
セリフが聞こえるのがマイナス。こちらもお腹の音同様連続で聞こえるところがいくつかあるので、それこそ
二度三度と同じセリフが聞こえてくるのは・・・。HシーンのBGVとは違いセリフに「意味」が存在して
しまっているのが余計鬱陶しく感じますね。セリフとして聞き取れないものだったらよかったんだけど。

声優さんについては取り立てて気になるところはなく。比較的エロゲーでは名前を見慣れない声優さんが
多い、あるいは完全に(エロゲ業界では)新人さん?という方ばかりですが、しかし実力自体は
聞けば高いことが判ると思います。強いていえば沙蘭さんの笹野葉月さんが少しだけ個性が強く
かつ耳慣れない方なので最初に違和感を感じる人はいるかもしれません。個人的には好きでしたが。
マッチングや音量などについてはこちらは問題に思う部分は特にありませんでした。

絵について。原画は池上茜氏。昔からのエロゲーマーさんからすると色々と思うところある方も
少なくない方だとは思いますがとりあえずそういうあれやこれやは置いておいて(笑)
原画としては流石、何年もエロゲ業界で作品を作っているだけあって非常に「エロゲらしい絵」で
安心してみることができます。技術的にも若干ちらほらと気になる絵があるかな程度で基本的には
問題なく。極端に個性的なものこそないものの、Hシーンの絵などは中々はっとなるような
魅せてくれる絵もありました。特にヒップラインを強調する絵が秀逸。
少し気になったのはやはり表情でしょうか。可愛らしいという印象自体はブレないものの、そのキャラとして
そのキャラらしい表情、というものからちょっとズレてるような・・・という絵がイベントCGにしろ立ち絵にしろ
ちらちらありました。キャラによっては全くないものもあるんですが。原画さんにとって
得手不得手があったのかなーとちょっと邪推してしまうところです。
対して塗りについては相当綺麗です。物凄い、というほどではないですし、個性は癖がある仕上がりでは
ないのであまり気にしている人はいないかもしれませんが、ソツのない優等生な塗りで
原画をしっかりサポートしています。

そしてそんなイベントCG。枚数は合計で104枚と結構ボリューム感あり。ついでに加えて
キャラソンCDや公式HPで壁紙になっている版権絵がカットインとして使用されているのもあり、一枚絵が
画面に表示されているプレイ時間に対しての比率は普通のフルプライス作品より高めなので
見ていての満足感はかなり高いと言えるでしょう。ただ、ヒロインのプレイ時間ボリューム同様、これまた
ヒロイン一人あたまのイベントCGの枚数はバラバラ。どころか、何故かHシーンについても澄香だけ
6シーンもあって優遇されていたりと、公平さには今一つ欠けます。
ちなみに通常イベントCGとHCGの比率はほぼ半々か、若干HCGの方が多いかも。
どっちが多いのがよかったかと言われるとちょっと悩んでしまうゲームなので、これはこれくらいのバランスで
丁度よかったのかなと思います。取り立てて絵や差分に不足感を感じる場面もありませんでしたし。

続いて立ち絵について。主軸となるヒロイン・キャラは基本3ポーズに腕差分と、更に衣装が
制服・私服・水着・浴衣完備の、他寝巻きや水着等特殊衣装があったりなかったり・・・くらいで
これまた非常に潤沢。特に腕差分が効いていて、かなりポーズの印象が変わるので
通常シーンの見てて飽きなさに一役買っています。塗りのよさもこちらでも出ているので、イベントCGとの
差などを感じる部分も殆ど無く。表情系の不足も全く無いので、立ち絵は理想的なものと言えるでしょう。

そして最後にお話周り。まずはキャラクターについて。
基本的に攻略できるヒロインズは立ち位置こそテンプレ的ですが魅力・属性としてはテンプレから
若干ズレている印象。どちらかというと美点よりも欠点を可愛さに転化するタイプが多いです。そのため
攻略していけば魅力を感じられるものの、初見の印象はどのヒロインもそこまでよくはないかなと思いますし
ヘタをすればその印象を最後まで引きずってしまう危険性はあると思います。また、全員が全員
エロゲらしくない妙にリアルな女性らしいメンタルを持った一面も持っているので、あまり深く考えてプレイすると
どこかしらでプレイヤーが理解できず引いてしまうところもあるかもしれない、ちょっと一筋縄ではいかない
ヒロインズかもしれません。ただ、みなが主人公に対して最初から多かれ少なかれ好意的ではあるので
そこがある種のクッションにはなっています。

しかしそんなちょっと難しいヒロインらの魅力を特に最大限引き出しているポイントはなんといっても
娘のはるかの存在が大きいでしょう。彼女が存在していることが主人公とヒロインの繋がりの強さの
存在証明かつ保障となっているので、妙な安心感でもって恋愛を楽しめるのは非常に興味深いところです。
また、攻略ヒロインによってはるかの性格まで変えて描いた部分がもう一つの好ポイント。
正直それは一歩間違えればキャラ崩壊すら有り得るものだったと思うのですが、ことのほか巧く
描ききれていた事それ自体もいいですし、それら各キャラ付けについても非常に魅力的。
お陰でヒロインと結ばれることを目的にするだけでなく、彼女と結ばれるとこんな娘が生まれるんだという
ある種倒錯的な欲求によりヒロインの魅力が相乗効果として副次的に盛り上がるのはこのゲームならではかと。
はるかの存在はこの作品の唯一目立つ個性でありかつ、この作品の最大の美点だと断言できるでしょう。

加えて、ヒロインズに対するとかなり平均的なエロゲキャラらしいサブキャラズもいい味を出してます。
特に愛理は何故に攻略できないのかと嘆く方も多いことでしょう。彼女が一番あらゆる意味で
エロゲヒロインっぽいんですよね。だからヒロインじゃないのかなぁとも。ま、ファンディスク期待ってことで。

そんな作品を駆け巡る主人公は・・・決してヘタレではなく、行動力もあるし、スペックも決して低くはない
天才ではないも努力できて才能もある優秀タイプであり、そんなに悪くは無い・・・んですが、今一つ
主体性が薄く、はるかを筆頭に外的要因による促しで初めて動く後手タイプなので、どことなく
存在感が頼りない印象はあります。決して悪い主人公ではないと思うのですが。

テキストについて。ライターは今臣なると氏という、少なくとも名前は見たことが無い新人?さんで、
ある意味ここが一番未知数な部分ではありましたが、基本的には非常にプレーンでフラットな印象。
ギャグにしろ萌えにしろ過度な味付けをすることがなく、かなり平均的。それ故文章での覚えは
あまりよくありませんが、しかし文章表現自体がヘタだとかそういう事はほぼなく、かなり
読みやすくはあるので、一度プレイを始めればするすると進む進行のよさは美点でしょう。

そしてシナリオ。「未来から娘がやってきた」というSF的な要素から想像されるであろう、その時間移動を
利用した問題への対処等のギミックはちゃんと全ルートに用意されているし、それらがどれも独立して
違った使い方をされていて周回ごとに飽きない工夫はされています。また、彼女と娘、という本来エロゲーでは
有り得ない三人家族としてのやりとり、萌えどころも普通の萌えゲーとしての萌えイベントとは別に
ちゃんと用意されているので、ある意味で期待に正しく応えたシナリオである、とは
言えるでしょう。・・・ただこの作品の場合、その正しく答えた事が作品の「覚え」という意味で足をひっぱって
しまっているように感じました。どっちもではなく、どっちかに傾倒していればなかなか珍しく個性のある
タイトルになったと思うのですが、どちらをも取ったせいで非常に中途半端な印象に。
SF面について言えば絶対に深く考えてはいけない、ドラえもんレベルのタイムパラドックスの適当さが
目につくし、恋愛面で言えば共通ルートの三日間ループ縛りがかなり強引でヒロインとくっつくまでの
説得力が今一つ乏しく、また個別に入ってもちょくちょくSFの茶々が入るので素直に萌えてる
ヒマがないというか。もうちょっと思い切って萌えゲーと割り切るか、逆に煮詰めて
シナリオゲーとしての魅力を高めるか、それらどっちかが欲しかったかなぁ、というところ。


以上、こんなところで。
はるかの存在という一つ大きな個性こそあるものの、しかし総じて見てしまうとやはりどうしても
どこかパッとしない作品だなぁ、というのが総評として思うところでしょうか。というかそもそも
攻略できないしエロシーンもないはるかで推すのはエロゲーとしてはどうかと思いますし・・・(笑)
描写にしろ萌え要素にしろ決して悪いものではないはずなのですが、
どうも細々とした部分が変化球だったりするのであと一歩楽しみにくい感覚が薄ら残ってしまうというか。

しかしとどのつまりそれは「惜しい作品」なのだとは思います。ちょっとしたそれら癖や何かを
ストレートな表現に変えてしまったり、潔く何かを捨てて何かを詰めるだけで、このメーカーは
個性的な魅力ある作品が作れるのでは、という期待を賭けることはできるのではないかなと。
各種基本的な要素についてはどれも及第点を軽く超えていますし、次回作でいきなり化ける可能性を
楽しみにできるメーカーなのは間違いないかなと思います。


それでは、今作のオススメユーザーについて。
やはり冒頭で語ったとおり、基本的には積極的に誰に勧められるという作品ではないものの、しかし
万人に対して「気になるんならやってもいいと思う」タイトルです。
ちょっとした個性がありつつ、無難な作品を楽しみたいタイミングはままあると思いますので
是非そういう時に選択肢にポンと挙げてみてはいかがでしょう。悪くは無い、はず!

あと、正直エロゲ業界には珍しい需要だと思いますが、娘に父性を注ぎたいって人はやっていいと思う(笑)
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