November 1, 2010

「キサラギGOLD★STAR」応援CHU!!

タイトル
 キサラギGOLD★STAR
 メーカー
 SAGA PLANETS
 発売日  2010年10月29日
 原画  ほんたにかなえ/とらのすけ
 ちまろ
 シナリオ  新島夕/姫ノ木あく
 若瀬諒
 評価
 78点(100点満点中)

なんで先生と資料室で二人きりのときに「胸の谷間に指突っ込む」って選択肢ないの?

破竹の勢い、とまではいかないものの、まず間違いなく現在のVisualArt'sブランドにおける
最優良成長株ブランドにして、実は割と歴史もながい中堅ブランド・SAGA PLANETSの新作。
昨今のオタクユーザーの琴線にクリティカルヒットする絵風と、前作で跳ね上がったシナリオの評判の
二軸を武器に出してきた今回の新作は、幼馴染グループと「夢」をテーマにした恋愛ラブコメADV。

個人的にも前作「ナツユメナギサ」は2009年のタイトルの中でも一番「好きな」一本であると
言えるほどに自分的ランキングの高い作品だっただけに、今作もカナリ期待をかけており、
体験版からもなかなかに前作と同じ趣、違う趣の二種類が感じられ楽しみにしておりました。

が。

ちょっと個人的に過剰に期待していた面は確かに否定できませんが、それらを差し引いても
やはりイマイチかなぁと思える点は結構な箇所で散見され、少なくともナツユメと比較すると
総合完成度では劣る、と言ってしまっていいでしょう。シナリオの面だけでもそうですが、
とかく細かなところで作りこみの甘さを感じました。特にゲームが進行すればするほど
その印象は強くなっただけに、尻すぼみなイメージがあります。

ただ一点、「キャラクターの萌え」に関してのみは着実に進化しており、ヒロイン達は今の世相を
より取り込みやすいであろう特筆すべき可愛さ、魅力を携えており、それらを目的に買う分には
十分アリだと言える選択肢だとは思います。


以下長文感想。


ゲームボリューム。風邪引いて寝たきりでも二日でクリアできたくらいなので(笑)そんなに長くは
ありません。共通ルート3時間半、個別ルート2時間半×4、サブルート1時間×3、そして最後に
TRUEルート1時間半くらいでしょうか。全部で18時間ほど。
サブルートは翼に対し奈々子、命に対し冬理、いちかに対し英子がそれぞれ組み合わせられており、
各メインのヒロインを攻略するとサブヒロインのルートへの派生を選ぶこと出来るようになります。
そして全ルートクリア後にTRUEに分岐する事が可能です。ただこれ、TRUEに行くための分岐に
入れることを示唆するサインのようなものがなく、またよりにもよってTRUEへ分岐するための選択肢が
一度クリアするとスキップが可能になるプロローグ部分に発生するので、正直不親切な設計です。
なまじ二週目をクリアしないと発生しないHシーンが各ヒロインに存在し、全ヒロイン個別をクリアしても
かなりシーンやCGが埋まらないため、ここで「あとは回収だけか」と勘違いしてTRUEに気づかず
ゲームを終えてしまうプレイヤーがいるかも。要注意。

ゲームの進行は日数形式、ルートの分岐は移動場所選択と通常選択肢の2種混合。
伏線が多い割に話に難しさ・ややこしさは一切ないのでどこで区切っても再開は容易です。

システムについて。
コンフィグ周り、項目については特に文句をつける部分はないでしょう。
基本画面サイズが1280×960と大きいですが縮小機能も実装してますし、
最近オミットされがちな個別音量調整も実装しています。オートモード設定も若干ですが普通より細かいです。
珍しい部分として、いわゆる「プログラムの動作優先度を落とす」なんてのもあります。
「ながらプレイ」をする人や、低スペックPCでのプレイに活用できそうな感じ。
プレイ中メニューについても基本的には普通に今時ある項目は大体あります・・・が
前述したHシーン回収やCG回収の手間の都合上、「次の選択肢へ進む」がないのが
正直周回プレイ中結構ストレスでした。「前の選択肢へ戻る」はあるのに片手落ちな印象を受けます。

デザインについては可も無く不可も無くな程度でしょうか。可読性に問題はありませんし
雰囲気を損ねているということもありませんが、しかし洗練されたデザインとは言えない感じ。
折角の大画面でもありますし、ちょっと勿体無いですね。

演出周りは基本的には立ち絵移動の類で済ませているのが殆ど。前作同様、要所で使われる
得意なエフェクトはありますが、天候、感情等の基本的なものはありません。
ドタバタゲーなんだし、天候エフェクトに近いものは特殊エフェクトで実装しているのもあって
もうちょっと工夫があってもよかったんじゃないかなぁと思える余地があるのは残念。
あと、他のゲームではあまり見られない・・・わけではないものの印象的なのが、カットインの存在でしょう。
小さな縦長、あるいは横長のCGがちょこちょこと画面に挿入される・・・だけなら普通ですが、
複数のカットインが同時に出てくることがあったり、ザッピング的な表現の向上に一役買ってたりと
使い方が少々普通のカットインとは違うため、ただ同時に立ち絵を表示するだけとは一味違った雰囲気作りに
巧く生きていて興味深いです。
しかし悲しいかな、この演出、話が進むごとにどんどんなりを潜めます。というか、体験版時点で
あれだけ多用してたくせに、個別に入るともう全くと言ってもいいくらい出てこない(笑)
このゲームの個性的な側面にもなり得たくらい趣深い演出だったのに残念。

音について。
まず音楽については個人的な感想でいえば基本的に文句なし。32曲、うちボーカル4曲ですが
BGMは「ぱぱらー」を筆頭に印象的で耳に残る曲が多いですし、かといってその自己主張が
ゲームの雰囲気を損ねるものもなし。非常に出来のいいものだと思います。
また、ボーカル曲もかなり個性的。その個性が故、人による好き好きはあるかもしれませんが、個人的には
右倣えな萌えゲー用曲、という方向からはかけ離れたタイプの曲ばかりなので好印象です。
特にお気に入りとしては沙弥ルート挿入歌の「狼男が恋をした」とEDの「Like a star」を推したい所。
一点注文をつけるとすれば、もう一曲、全ルートで流れる挿入歌の「as always」がちょっと・・・
曲単品では良いのですが、なんといっても個性派な歌を歌うWHITE-LIPSの曲ってこともあって
歌自体の引力が強すぎてちょっと雰囲気ブレイカー入ってるかも。おかげで
「今この曲が流れてるシーンはシリアスなんですよ!」という押し付けがましさを
他のゲームの挿入歌シーンよりもより顕著に感じてしまうような気がしました。

効果音系は劇中シーンを彩るものはそんなに多くないです。コンフィグサウンドは前作を踏襲。
基本的には問題ないのですが、コンフィグ音については結構透明感がある音なので、前作ナツユメに
かなり合致していただけに、イメージの問題で変えて欲しかったかも。

で、普段はあんまりつっこまないんですが、音声についていくつか。
まず全体的に声の音質があんまりよくないです。ちょこちょこ大声で割れてる所があったり、
聞きづらいところがあったり。銀弾系のゲームとはまた違ったベクトルで音質が悪いです。
あと、声優についてどーしても、沙弥だけは私もNGかな、という感想に最終的に帰着しました。
サンプルボイス公開の時から賛否両論あり、個人的にはその時点では別に「まぁ、こういう初々しい
可愛さはそれはそれでアリじゃない?」と思っていたのですが・・・この声優さん、ぎゃおー!とか
ちゅーとか言ってる分にはやっぱり可愛いんですけど、致命的にシリアスに向いてない・・・。
メインヒロインなだけあってシリアスセリフ多いんですが、兎に角セリフに言わされ振り回されているように
感じてしまい、イマイチシリアスがシリアスになりきれてない部分が多々。
サブヒロイン役や、ゲーム自体が最初から最後まで萌え一辺倒なタイプだったら問題なかったのでしょうが
この作品のこの役・立ち位置に設定するキャスティングではなかったですね。

絵関係。
原画は公式HPのクレジットではほんたにかなえ氏、とらのすけ氏、ちまろ氏とありますが
エンディングクレジットを見ると更にあと2名名前を連ねています。
基本的には全員可愛らしい絵かつ、表現しにくいですがどことなくこのメーカーの色とでもいうべき
似たような指向性を持つ原画氏郡、という雰囲気がしっかり固まっているため、、キャラが並んでも
違和感は薄いし、その指向性自体が実に今の世相向きな可愛さに特化しているため、
絵という要素一つだけでもセールスポイントの一つとして間違いなく高ポイントでしょう。
ただし全員、「可愛い絵」ではありますが「巧い絵」という観点からすると疑問に思う部分は少々。
立ち絵にしろイベントCGにしろ、どのヒロインもちょこちょこ体のバランスが崩れている所は散見されます。

イベントCG枚数は90枚超。あくまでCG閲覧モードに登録されるしっかりした一枚絵の枚数だけで
これだけあり、実際は前述したカットインの存在や、差分扱いされてるけど全然違う絵を一枚に
カウントしてあるCGなどもあるので、絵の数的ボリュームで言えば結構満足度は高いです。
非HシーンとHシーンの比率は6:4くらい。ゲームの方向性からすると丁度いいくらいではないでしょうか。
ただキャラクターの絵はどれも可愛いものは可愛いしエロいものはエロいのですが、構図的な面では
インパクトのあるものはあまりなく印象的としてはイマイチ薄めで、かなーり「普通」。
加え、これは背景絵自体にも言えることなのですが、キャラはともかく背景、及び小物の
完成度がかなり低いです。出来自体もいまいちだし、パースとして可笑しいものが結構。
更に、序文で述べた通りゲームの進行度が進むとともにクオリティが落ちる、という点については
特にこの「絵」についてが顕著で、ゲーム後半のCGになればなるほど微妙なCGが多く、最初からHPや
雑誌で公開されていたような序盤のイベントCGのクオリティを最後まで維持することは出来ていません。
特に煮詰めが足りてなかった印象があるポイントの一つですね。

立ち絵量は個別のキャラ一人に対するボリュームとしては少なめ。ですが、結構サブキャラで
立ち絵があるキャラも多いので、そこらへんを加味すると許容範囲でしょう。
普通の作品とはちょっと違い、メインヒロインは大きな立ち絵パターンは2種類ですが、
双方に腕などの動きで更に派生2パターンがある形。衣装差分は私服・制服が基本完備ですが、
それ以外はあったりなかったり。かたや翼は少ないですが、命はバイト制服にエプロン制服があったりで
優遇されていたりと、なんか妙に差が激しいです。
ただ、その分というかなんというか、翼はブラックモードの恩恵もあってかやたら表情が豊か。
ちなみに他キャラについては表情もほどほど程度のバリエです。
どのキャラも一応必要な部分は抑えていると思います。特に足りてない印象がある部分はなかったかと。

さて、キャラクターについて。多分本作で一番褒めるべき部分ですね。
兎に角女の子たちがみんな魅力的です。どちらかというと味付けはかなり濃い目ですが、その方向性は
最近よくある萌えゲー的だとか、ラノベ的だとか、そういう方向・・・というよりは、前作ナツユメ同様
実にエロゲーらしい、それもちょっと古いタイプの属性を付与している印象が強いです。
ただしかしだからといって古臭さを感じるわけではなく、今だからこそ逆に新しいというか、古い味付けを
今風にリファインし、今のユーザーに受けそうなポイントをしっかり抑えたキャラ作り、とでも
表現すべきでしょうか。具体的にどこがどう、と指し示すのが難しい、概念的な表現で
非常にアレなのですが、その作りが故に今の新しい層から、2000年代前半のエロゲーを愛した人たちにまで
幅広く、年齢層10年~15年くらいの広さで受け入れられそうな雰囲気を感じ取れます。
加え、前作の場合はヒロインの一部にそれら魅力が偏っていたのと比べると、今作はメインヒロイン全員に
平均的に振りまかれ、かつサブヒロインにもメインヒロインを食わない程度をわきまえつつ
うまく魅力を配分しているので、全キャラあわせても人気が恐らくちゃんとばらけ、一極集中にならない・・・
ないし、少なくとも明確な不人気が生まれないだろう、バランスのいい構成であると感じました。
(ただし、サブキャラについては登場頻度における存在意義格差が存在しますが・・・)
また、味付けだけでなく、ストーリーとリンクするキャラクターの軸もブレが少なくていい感じ。
フィクション性が強いが故の部分もありましたがそこはそれ。少なくとも、感情移入や
キャラクター達と一緒になってストーリーや展開を楽しむという部分や、没入スピードの敷居の低さは
これらキャラクターの安定性から生み出されている部分が非常に強いと思います。

更に主人公が好人物なのもまたポイントが高いですね。基本的に凡人なので癖が強くないですし、
何より事態に対してプレイヤーがこうして欲しいと思うような行動を比較的ストレートに取るので
プレイ中に発生するストレスがかなり低いです。それでいて魅力もあるし、ちゃんと話の
大きな軸の中心としての役割も持っているので決して空気主人公でもないですし、こういうゲームの
主人公としては理想的な好例だと思います。

テキストについても若干の古臭さはありますが、キャラの作りと比べると基本的にはそこまで癖は強くない
ニュートラルなテキストです。テキスト、というよりは、セリフ作りという意味で昔のエロゲーらしさを
発揮していて、なかなか最近のゲームじゃ聞くことのできないような特徴的なセリフが多かったように
思います。口癖や掛け声なんかが判り易い顕著な例ですが、他にも翼の脳内モノローグなどもこれに
当てはまるでしょうか。脳内らしいセリフをあえて音声に起こしているのが面白いです。
ストーリーのテンポなども過剰に速くも遅くもなく。読み進める事事態に苦を感じるような部分はなく、
サクサク進めることができるプレイしやすいテキストだと思います。

さてしかし、これらキャラとテキストで織り成されるシナリオはというと・・・ちょっといまいち。
いまいち、と言っても個別単体で見ればそんなに悪くはないとは思います。萌え系ギャルゲーのルートとしては
どのヒロインもちゃんと、それぞれのヒロインに合わせたヒロインのテーマ・夢を過去や境遇と
織り交ぜつつしっかり綺麗に決着をつけていますし、恋愛要素についても全員が幼馴染であるという
気心知れた部分を無視せず、幼馴染以上恋人未満という絶妙な狭い関係期間をちゃんと描写しつつ
くっついた後のラブラブ分も満足できるくらいには取り入れていて、押さえるところは押さえてます。
加えて各サブヒロインルートも対になっているヒロインのルートの別側面を演出しつつ、
ちゃんと恋愛ゲーとしても体裁を成していて「おまけ程度」って程おざなりなものでもなく、十分な出来。
ただ個別の部分に文句をつけるとすれば、やはりシナリオ面でも後半の詰めの甘さは感じる事が出来、
前作ではあまり感じなかった「ご都合主義」が結構な場面で散見されるなど、いまひとつ強引な部分もあって、
あくまで「そんなに悪くない出来」の範疇を出ない、そこそこの面白さに終始してしまっています。

さてじゃあそれ以上に何が悪いのかというと、もっと大きな視点で見た時の構成が問題でしょう。
まず個別ルートが単体で完成しすぎています。個別ルートがTRUEルートや共通ルートで起きた事件や伏線と
乖離しすぎていて、一つの「キサラギGOLD★STAR」という物語としての納まりと流れが相当に悪いです。
おかげでとにかくTRUEルートまで至るまで、及び終えた後のカタルシスというものがだだ滑り。
また、唯一大軸に関連性の強いメインヒロインである沙弥ルート、及びそもそも沙弥の存在についての設定が
かなり強引。話の大筋を水とするならば、彼女やそれに関する話は完全に油。
これらを混ぜるのであれば一工夫か二工夫がいるはずなのに、どうにもそのまま同じ器にぶち込んだものだから
シリアスパートでさっぱりこれら要素が交差せず、とてもちぐはぐなイメージになってしまい
物語全体を見直した時、果たしてこの話は何がしたかったのか首をかしげる事になります。
素材や雰囲気作りは悪くなかったはずなんですが。どうしてこうなった。
しかも、これら悪点はどちらも前作ナツユメナギサでは非常に巧く乗り越えていた点であり、同時に
前作を名作におしあげた最大のポイントでもあったように思うだけに、
そこ考えるとやはり本作は「前作よりも劣化した」といわざるを得ないと思います。



というわけで。以上、要素別感想。
どこを取ってもやはりちまちまと欠点の散見される、期待からすると残念な一本だったように思います。
悪いゲームではないのは確かです。確かなんですが・・・本当に程々の出来。
ここ2作におけるメーカーの躍進具合と比べるとやはり今回の一歩は足踏み程度に終わってしまったように
感じました。いいところは突いてたんですが。
というか、大体の欠点って時間があればより向上が見込めた部分であるようにも思うんですよね。
一度も発売を延期せず発売しましたが、もうちょい伸ばして内容を煮詰めただけでも
もう少しマシな出来になってたんじゃなかろうかとも感じてしまったり。残念です。

が、とは言え、キャラクター作りだけは確実に特筆に価するかと。
特に昨今はこの業界ではラノベ的なキャラクター作りが主流になりつつある中、往年のエロゲーのような
感性のままにユーザーに受け入れられるキャラクター作りをできるメーカーは少なくなっているので
次回もまたこの調子で魅力的なキャラクターの動きある作品を作ってほしいなとは思います。


以上。それではいつものお勧めユーザーですが・・・とりあえず
「ヒロインが可愛いと思えた萌えエロゲーマー」と「最近のエロゲーは肌に合わないと感じはじめていた
一昔前の萌えゲーが好きだったエロゲーマー」には多分うまいことヒットするんじゃないでしょうか。
しかしナツユメナギサの「完成度」を求める人はちょーっと待ったをかけたいところです。
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