
| タイトル |
PARA-SOL |
||
|---|---|---|---|
| メーカー |
ROOT |
発売日 | 2011年7月23日 |
| 原画 | CARNELIAN/天宮ぽらん | シナリオ | 宙形安久里 |
| 評価 |
72点(100点満点中) | ||
公式のスクエアバナーが小さすぎたのでウェブキットからちゃちゃっと自作。
ROOTお久しぶりの新作は近未来SFバトルADV・・・の皮を被った家族愛ADV。
前作の桃華月譚をやってなかったので個人的にはよりひさーしぶりにROOT作品に触れた感じですが
なかなかどうしてROOTというメーカーの味は変わらないものですね。
当たり前のように判っていたことですがCARNELIAN氏の繊細かつ緻密な絵の美しさは当然として
体験版だけ見ても判るだけの、贅沢なCGの消費っぷりや演出の幅、音楽の良さなど
ボリュームというか密度のある構成でゲームとして満腹感ぎっしりな点は非常に好印象。
しかし反面、正直判りづらいシナリオ、魅力はあるが感情移入しにくい作りのキャラクター、
地盤設定の多さによる情報のこんがらがりなどなど、序盤はともかく進めば進むほど
とっつきにくくなっていくのがかなりプレイヤーを選びそう。
公式HPや広報物などから得られる印象とプレイした後の印象は大分別物感がありますね。
CARNELIAN氏の絵が好きでそれだけでお腹いっぱいになれるなら一も二もなくオススメしますが
それ以外で話の方にちょっと興味があるかな、なんて程度の人は若干の一考を。
厨二・煩雑な情報量・奇人変人・すっきりしない。この辺りの単語に忌避するものがあるなら
少々ご注意ください。
以下長文感想。
ゲームプレイ時間は18時間程度でしょうか。ルート概念はほぼなく、一本道みたいなものです。
ただ「誰寄りのエンド」にたどり着いた、という概念が存在しており、寄っていたヒロインのHシーンが
クリア後に追加される、という形になっています。普通に「○○エンド」を期待してる人は注意です。
ちなみにスキップは相当に早いので複数回巡るのはそんなに手間でもありませんが、その代わり
選択肢が異常なまでにわかりにくく難解なので、パターンを把握するのはひと手間かかるやも。
また、先日の黄昏のシンセミアほど便利でも親切でもないですが、フローチャートのような「クロニクル」という
システムから各種シーンに飛ぶことが可能で、またシナリオの進行やフラグ状況によって時系列に
小話が追加されます。とはいえ差し込みの小話については追加Hシーンを除いて殆どが
非常に短いものなので、読んでいる時間はプレイ時間の数%程度でしかなく、
基本は主軸の一本を追いかける形になるでしょう。
システムについて。コンフィグの項目は非常に充実しており、特にテキスト面において、オートモードの
停止方法やスキップ継続条件等、かゆい所への手の届き方は個人的になかなか有り難かった印象。
反面、音声については最近のゲームにしては個別ボリューム設定がなかったのは残念。
個別ON/OFFはあるのですが。
ゲームシステムについては上でも少々触れたクロニクルシステムが特徴的。小話の他、用語集も兼ねており
やたらと地盤の情報が多い本作はこれがないのはプレイするに厳しすぎるでしょう。
ただこのクロニクル、色々と気になる点も。まず小話についてですが、どこでフラグが成立し、どこで小話が
追加されたのかが全く表現されません。ですので、気がついた時やクリア後に改めてどこかに話が追加されたか
探しにいく必要があります。また、この画面にはタイトルのエクストラ項目からのみならず、普通に劇中いつでも
移行することができるのですが、これがいまいち示唆がない。何の変哲もないテキストウィンドウの装飾っぽく
移行ボタンが配置されているので、気づけないユーザーは最後まで気づけない可能性も。
加えて用語集について。「最初から用語説明全ての項目が開放され読める状態になっています。」
正直、読まないほうが楽しめるだろうネタバレが結構用語集にバラ撒かれているので、これがかなり困り者。
単語が登場した瞬間や、状況によってタイムリーに登録される形式だったらよかったのに、と思います。
システムグラフィックについては基本的には問題なく。ゲームイメージ通り、透明感と近未来感、その両方が
うまいこと表現できていて非常に綺麗です。強いて言えば若干全体的に暗めなので、特にコンフィグ画面で
ダークミントの背景色にダークグレーとブラックで下地を、ONの項目にのみライトミントの色合いを使用する
デザインのため、ON項目以外がかなり沈んでいて見づらいかな、という懸念は少々。
音楽はMUSIC項目で確認する限り20曲後半。ボーカル曲は珍しく主題歌の1曲しかありません。
ave;new自体元々そういう傾向の曲作りですが、BGM、主題化共にゲームの雰囲気どおりの
クリアなものが多く、質も良好。ただ、シーンごとの選曲については物凄く偏りがあるので
MUSICモードで確認して「あれ、こんな曲あったっけ?」なんてものもちらほら。
グラフィック。本作最大のメインはどう考えてもこれですね。
序文でも褒めちぎりましたが、業界中でも巧い絵師として名を募れば確実に上位になるであろう
知名度と実力を備えたCARNELIAN氏の絵は珠玉の出来。体つきがどうこう、なんて懸念は一切ないし、
アングルや表情なども魅力的ですし、加えて髪などの繊細さから特に来るのでしょうがなんといっても「流れ」が
特に素晴らしいですね。水や風などの流体からくる「動き」の表現は流石の一言。
枚数も半端がないです。アルバムモードで表示される枚数は140枚超と平均的なADVから比べると
かなりの多さ。差分も特に不足があるようにも思いませんでした。
また、ひとつのHシーンに使われる枚数が多いのも嬉しい人には嬉しい感じ。
更に加えて今作の絵のもう一つの魅力はなんといっても立ち絵でしょう。サブキャラこそたいした数ありませんが
その代わりメインキャラの衣装・ポーズ量はかなりの量。なかでも乃愛の衣装は・・・制服・パジャマ・
私服が数種類、浴衣に水着にジャージになんやかんや・・・とえらいことに。単純に凄い、としか言えません。
衣装によっては存在しないポーズもあるみたいですが、兎に角プレイ中、メインの女の子は
ファッションショー状態で見ていてさっぱり飽きません。かわいいは正義。
立ち絵に文句をつけるとすれば、目パチがある立ち絵とない立ち絵が存在することか。あるならある、ないなら
ないではっきりして欲しかったなぁ、という気がします。目パチしてるキャラと目パチしてないキャラが
同時に表示されてたりすると結構な違和感なんですよね。
さてキャラクター。
何よりも本作において一般的な作品と違うところは、主人公、及びメインヒロイン三名という最重要キャラが
どいつもこいつも常識がない・はずれてる・乏しいのどれか、ないし複数に当てはまっているということ。
個性的であり、ズレてるが故の貞操感の差異などもあって、普通にはない萌えやエロさを感じることができたり
普通じゃないが故に体当たりでキャラたちがぶつかっていく様は変に冷めたキャラよりも感情的で、
プレイヤーという傍観者の視点で見れば楽しめる、という側面は確かにあるものの、逆に言ってしまうと
とにかくどいつもこいつもズレすぎて感情移入という点から見ればかなり欠陥気味。加え、大抵の場合
常識からズレたキャラはストーリーが進むに従って周囲や環境に合わせて適合・成長していくのが物語の
よくあるお約束であり、その過程において感情移入を促す場合が大概ですが、本作については全員が
ズレているため、ズレたままストーリーが進み、成長とかそういうのをとんでもなく感じにくいのも難。
成長しないわけではなく、勘違いがそのまま根付いたり、やたらと素直で葛藤がなかったり、かと思えば
葛藤したまま溜め込んで終わったり・・・と、セオリーから兎に角外れた動きをするので、一般的なゲームに
慣れていれば慣れているほど、違和感は募るし、感情を把握はできても理解はしにくかったりするのでは。
続いてサブキャラ・・・についてはあんまり語ることがなかったりとか。ぶっちゃけ、登場シーンの量が
メイン以外については壮絶にガタ落ちするので、なんとも言いがたいんですよね。存在感も厚くはないし。
バトルモノの側面もある割に、劇中でバトルといえるほどの行動をしない方すらちらほらいるくらい。
この辺はもうちょい細かくスポットをあてて描写してもよかったような気はしますね。
この作品は谷田部家のための物語である。そういう風に割り切った理解が必要です。
シナリオとテキスト。
テキストについては表現的に難解というよりは、極力説明をしない、してもさらっとしかしない、という事が
多々見られるためそう見える、といった感じ。基本はナチュラルで癖みたいなものはあまり感じません。
基本的に主人公の主観か状況の客観的描写しかないので、前述の常識欠如の点からして
シュールな笑いみたいなのはたまに漏れ出るものの、昨今で好まれるような笑いやギャグ、
軽妙な言い回しなどとはやや遠いです。
また、主人公の一人称、ないし状況説明の客観視点でのみほぼ物語が語られるため、前述の主人公の
常識欠如の問題からして、やはり物語に入り込む、というよりは、物語を読む、という形式での楽しみ方に
限定されてしまうような雰囲気はどうしても感じます。
シナリオ。
正直どうなのかなぁ、と思わなくもないです。キャラクターの項でも触れたようなキャラ同士の生の
ぶつかり合いや、ちょっとズレているけれど確かにある「家族の絆」だとか、そういう部分では面白いものの
やたらめったら多い地盤の設定や情報からくる状況の煩雑さだとか、結局最後までプレイしても
判然としない謎が結構あることとか、やたらバトル設定があるくせにその辺とにかくおざなりなのとかが
どうもいちいち邪魔をします。全体通してすっきりしないというか、なんというか。
恐らく体験版をやった人なら想像してもらえると思うのですが、「とにかく最初から最後まで
いい意味でも悪い意味でも体験版の雰囲気が続きます」としか言うのが一番伝わりやすい比喩かもです。
もうちょっと段階的に謎を紐解いていくカタルシスや、キャラの成長、場面場面でバトルを入れての
短期的な展開へのテコ入れとか、そういうのがあってもよかったのでは。
実に話全体の印象がフラット。フラットすぎる。終わりも唐突味があるし、尻切れな印象も。
もうちょっとなんとかする余地はあったんじゃなかろうかなぁ。
以上。
ちょっと・・・なんというか、褒めれるところ、個性のあるところ、ダメなところ、何から何まで尖っていて
要素で見た場合のバランスが悪い作品だった、かなぁ。絵を筆頭に、いいところとはとことんいいので
そこが好き!って人にはたまらなくいいゲームだとは思うんですけど。悪い点についても、感情移入度の件などは
特に主観によって印象が変わる事だとは思うので、絶対に×!と断じているつもりはないです。が、
一般的な作品とどれだけズレているか、を考えると、そのズレとどれだけの人から受け入れられるかという部分は
そこそこに正比例すると思うだけに、やはり本作は人に気軽に進めるにはたたらを踏む一本かなぁ、と。
まあ、元々からしてその異端さ、個性は幾分かはROOTというメーカーの味、というところもあるんですけどね。
さて、というわけで本作のオススメユーザー。
冒頭でも言ったとおり、やはりまず第一にこういう人には確実に、というのは
「CARNELIAN氏の絵がとにかく好きな人」。これは何度も言っています通り間違いなく楽しめます。
他については・・・そうですね、やはり「体験版をやって、この体験版の雰囲気をまだまだずっともっと
味わいたい、と思う人」でしょうか。単純に「体験版をやって、この続きが気になる人」というのとは
若干表現が違う、その差にご注意いただければと思います。


















