July 5, 2010

応援お願いするわね

 タイトル
 こんそめ! ~combination somebody~
 メーカー
 Silver Bullet
 発売日  2011年6月25日
 原画  犬洞あん  シナリオ  日野亘/沖水ミル/鍛冶屋太郎
 評価
 72点(100点満点中)

SilverBulletの新作は、パーティdeクエスト解決!ハートフルコ(ンソ)メディAVG!
パッと見わけわからんジャンルですが、結構的を得てる表現ですねこの表記。

エロゲ界でも恐らく癖の強いライターの名前を挙げよと言われたら5指か10指には入るんじゃないかという
日野亘氏のテキストと、ういんどみるのツナガル☆バングルでデビューした犬洞あん氏原画という
異色コンビの作品でしたが、なかなかどうしてうまいこといってるんじゃないでしょうか。
ゲーム中でやっていることに合わせ、全体的にレトロゲーの要素・雰囲気を散りばめ、ちょこちょこ入る
ドット絵演出やゲーム的アナウンスなど、遊びの部分に一貫性と関連性を持たせているのも興味深いし、
全体のとっつきやすさにも繋がっていて、日野ゲーの入門編にはちょうどいいんじゃないでしょうか。

ただ、それらゲーム演出が足をひっぱっている部分もあったり、やっぱり日野氏の癖はそれでも強いし、
意図してなのか意図せずなのかはわかりませんが、ちょっとお話に消化不良な一面もあったりするので
結局いつも通り(笑)イマイチ万人には薦めにくい作品に。

あと、プレイする前から多分そうなるだろうとは思ってたけど、恐ろしく評点つけづらいし、
評価もえらい書きにくい珍奇な作品でございました。(笑)


以下長文感想。


ボリュームは21時間程度でしょうか。共通ルート7時間、スィエルートのみ3.5時間、
他4キャラ各2.5時間ほど、あと+α。実質スィエルートがグランドルートとなり、キャラクターほぼ総出で
大掛かりに色々と絡み合うストーリーになってます。が、何故かこのゲーム、ルートにシナリオロックが
かかってておらず、早いうちにスィエルートをやってしまうこともできるため注意が必要。
ほぼ全ルートの若干のネタバレをちまちま含んでいるので先にやるとその後に物足りなさを感じてしまうかも。
クエストクリアやエピソードの刻みにレトロゲーっぽいポップアップが出現するので
プレイの区切りはつけやすい方か。ルート確定時にも特殊な演出が入るので、区切りにもちょうどいいし、
誰のルートに入ったか一目瞭然でわかりやすいのも好印象。

システム。
項目関係は一通り過不足なく。システム自体も軽め、スキップも早めでほぼストレスフリーですが
選択肢出現時にテキストウインドウのメニューボタン操作以外が利かないのは若干不便。
全体デザインは見事に「レトロなJRPG調」で仕上げてあります。ドットフォントデザインに
ドットを強調したフレーム、いさぎよく真っ黒いメニュー等々。また、演出面でも、所々で
「アイテムを手に入れた」だの「ステータスが上がった」だの「ステータス異常になった」だの
場面に展開に合わせてそれっぽい効果音と共にポップアップ表示されたり、とにかく徹底して
「それっぽく」なっています。また、要所によっては特別なドット絵による動きがあったりも。
見ていて非常に楽しめる演出であり、作品のテキストの雰囲気や劇中表現としても
そこそこマッチしていて興味深いものではあるのですが、その反面、この演出のせいで
どうしても安っぽいというかチープというか、「盛り上がり」という意味に非常に水を差す事が多いのと
実際ゲームのようにクエストを着実にこなしながら進むのは共通パートまでで、個別ルートに入ってしまうと
割と普通のシリアスADVになってしまうため、要所要所でこの演出が逆に違和感になってしまったりも。
確かにキャッチーですし、ゲームを彩る要素として一本筋を通したことには評価したいですが
現代のエロゲーとレトロゲーを完全にマッチさせるには残念ながら至らなかった、というところでしょうか。

音楽関係。
ボーカル2曲、BGMはそこそこ。ボーカルの2曲目はEDといってもスィエルートにしか使われません。
主題歌は下手すると今年1,2を争うんじゃないかってくらい中毒性の高い楽しい曲。かなりお勧め。
BGMは前述のレトロゲーの雰囲気とゲームのテンポの中庸をうまく表現していてなかなかのバランス感覚。
耳障りもよく、つい口ずさんでしまいそうな小気味いいリズムのものが多いです。
・・・と、曲自体の出来に関しては悪いことはないものの、それを活用するゲームの方に若干問題が。
曲切り替わりがフェードインとフェードアウトによるクロスフェードなのですが、被さり部分が一様にして
異様に長い。その長さが合う場面もあるにはあるのですが、ほぼ全てのパターンにおいて長すぎます。
おかげで場面の話題の雰囲気が変わったのにBGMが切り替わりきらず、イマイチ締まらない場面が多々。
あと、極稀にクロスフェードでなくブツ切りで切り替わることもありますが、これもまた
あまりにあまりなブツ切りで雰囲気ブレイカー。どちらにせよ、「曲の切り替え」という点はマイナス。

絵。
正直、犬洞あん氏がSilverBulletに来るってのは予想外だったなぁと思いますが
とにかく「可愛い絵」という意味ではかなりのものでしょう。女性原画らしいタッチで、登場する
女の子達の笑顔がどれも素敵。また、メインとなる全キャラに「ぽえー」っとした表情があり、この破壊力は極悪。
ゲーム自体のポップでリズミカルな雰囲気にも絶妙にマッチしており、この作品にはこの人しかいない、と
断じても問題ない素晴らしい人選です。ただ、「ツナガル☆バングル」程ではありませんが、可愛さは兎も角
人体として若干安定しない部分はないこともないので、そこはちょっと残念ですが、次に期待でしょうか。
また、枚数は兎も角、イベントCGについては差分が足りてない、というか、「何故このイベントCG場面における
この部分を絵として切り取らなかった」という気になる部分が結構ちょくちょく。表情にしろポーズにしろ
文章で描写されている場面と描かれている絵に差があることがあり、首を捻ってしまう事が。
立ち絵は良くも悪くもそこそこ。メインキャラ面々の差分は普通か若干少ないくらいの種類数ですが、
サブキャラで立ち絵か、立ち絵がなくともテキストウィンドウの顔だけはあるキャラも多く、
キャラの存在感では物足りなさを感じない反面、サブキャラは基本表情もポーズも差分が殆どないため、
紙人形状態なのでメインキャラと絡むと違和感があり、一長一短だなぁ、という印象。

キャラクター。
日野氏の作り出すゲームのキャラは基本的に個性バリカタの強烈な「キャラクター」らしいキャラクターが
多いですが、今作も相応にどいつもこいつも個性的。誰も彼も我が強く、主張に一貫性があるので
誰かしらは苦手に感じてしまうキャラクターがいるかもしれません。しかし、その一方で
そのキャラ立ちの強さを逆手にというか、それを地盤にした非常に先鋭的な萌えを各個が持っているので、
「こういうキャラはいいな」とちょこっとでも思うと急に吸引力が上がり引き込まれます。
一方サブキャラは、キャラ数がかなり多いためルートによっては出てこないものも多く、
全ルートで何らかの出番があるのは10人くらいのサブキャラ中でわずか2~3人程度のため
あまり覚えのいいキャラはいないかも。まあ、変にメインキャラよりも絡みが多くて魅力的な
FD前提のキャラが最初から用意されてるのよりは潔くメインヒロイン勢に注視できていいのかも。
一概にネックと断じることはできないものの、かなり評価が分かれそうなのは何よりも主人公か。
行動力やスペックは「普通の人間として」は結構高いし、飄々としてフリーダムで、ノってる時は
サクサク動いて進んでくれる魅力的なキャラになる反面、あくまで「一般人」のカテゴリで優秀なだけで、
殆どのメインキャラが「逸般人」として何かしらに特化した優秀さを持っているため、大きな見せ場において
イマイチ存在感が無いことや、場面によっては短慮だったり、デリカシーが無かったり、察しが悪かったり、
自分の天井を無視して動いてしまったりと、登場人物の中で一番ムラが激しい人物であるため
プレイした人はかなり明確に「好き」と「嫌い」で対極に分かれるのではないでしょうか。

そしてシナリオとテキスト。
テキスト、という面においてはさすが日野氏というか、氏らしく婉曲歪曲しまくった表現を
小気味よくテンポよく韻を踏むかのようにポンポン繋げていくテキストは人を選びまくるものの
好きな人にはたまらないものがありますし、逆に苦手な人は結構すぐに混乱してしまうでしょう。
それでも今作はまだ大分とっつきやすい方でしょう。前作の桜吹雪や、暁WORKSのコミュに比べれば圧倒的に
ついていきやすい、まろやかなものになっています。レトロゲー調のゲームの雰囲気に文章側が刷り合わせて
いるようにも感じます。リズム感がマッチしすぎな程に安定しているので。

シナリオ。いつも通りというか、他のゲームなどからはほぼ類をみない、冒頭の主人公の立ち位置が
アウェーを通り越して無関心の他人からスタートし、それぞれのキャラの個人的な思惑や利益から
大して仲の良くないコミュニティを立ち上げ、それがいつの間にか色々なイベントをこなしていくうちに
かけがえのない「パーティー」になる過程をじりじりと楽しめる様はまさに氏ならではで、期待通り。
ルート個別においても、グランドルートとなるスィエルートも含め、それぞれがそれぞれ持っていた
思惑・過去などをしっかり掘り下げ、決着をつけている様は評価できるし、ヒロインの魅力についても
話のさなかで過不足なく表現しているのは実にいい感じ。
しかしながら逆に、「全体を一貫して通っている謎」についてはかなり未消化な点が結構あったり。
次回作を考えているのか、演出としてあえて謎を残したのか、単純に描く時間がなかったのか、
どの理由も当てはまりそうな尻切れ感があるため、全てのプレイを終えた段階での釈然としなさは
どうしても残ってしまいます。
また、演出の面で述べたとおり、演出の自己主張に引っ張られて盛り上がりに水を差される点に加え、
テキストのテンポの安定感が逆に仇となり、まるでサビがない曲を聴いているかのような
ゲームの進行の印象のフラットさがプレイ中の感傷を馴らしてしまっているようにも感じました。


さてまとめ。
このゲームのどの点についても言えることは、特記するにあたるような「良い所」と「悪い所」が
ほとんど表裏となっている、という事でしょうか。自分で書いてても結構混乱しましたが、とにかく
ある一面ではよい個性となっている面が別の一面では悪い方向に振れてしまうばかりで、結果として
いまいち印象として薄く、丸くなってしまっているように思えます。
とはいえその平均化した最終的な出来で言えば十分及第点の出来を備えているゲームであることは
確かですし、ゲームの雰囲気を一元化するといった思い切った作品作りの心意気も潔く、気持ちがいいし、
メーカーとして色々な模索や試行錯誤、決断を見て取れる、なかなかに興味深い一本だったのは
確かではないかな、と思います。次回作ではどんな一面を見せてくれるのか期待できるものでした。

というわけで本作のお勧めユーザー。・・・正直、かなり悩みます。とりあえず、
「日野氏の作風に興味がある人」と「日野氏の作品をプレイした事があり、楽しめた人」、
「普通の萌えゲーにちょっと飽きたので、半歩ずれているものがやりたくなった人」くらいか。
ただ、どの場合にしろ体験版は一度試してみるのをお勧めします。やはり珍味気味なのは否めないので。
体験版が楽しめれば最後までそこそこ以上には楽しめるとは思いますよ。
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