
| タイトル |
処女はお姉さまに恋してる ~2人のエルダー~ |
||
|---|---|---|---|
| メーカー |
キャラメルBOX |
発売日 | 2011年6月30日 |
| 原画 | のり太 | シナリオ | 嵩夜あや |
| 評価 |
79点(100点満点中) | ||
キャラメルBOX二ヶ月連続リリースの後半戦は、その「キャラメルBOX」という名を
エロゲー界に一番広く知らしめたといえるであろう名作「処女はお姉さまに恋してる」の続編。
名前の出ているメインスタッフもほぼそのままで、最近よくある「名前だけ続編」なんてことはなく
実際プレイしてみても前作からちゃんと地続きの雰囲気を備えており、前作を楽しめた方なら
ほぼ間違いなく一定レベル以上は楽しむことができる堅実な続編ですし、またそれでいてちゃんと
新規でも楽しめるであろう、安定した面白さと入りやすさを備えています。
さてしかし間違いなく面白い作品ではあったものの、全体の出来を事細かに考えてみると
突っつきたくなるような重箱の隅があちらこちらに散見されます。
マスターアップ後に演出強化パッチなるものを配布しているあたりも鑑みるに、やっぱり
実際のところ本当に目指していた完成版とは言えないんだろうなぁ、と感じてしまうような
ボリューム・バランス・攻略ルートの足りなさ(少なさ、ではない)や、その他細かい点諸々を
鑑みると、今ひとつプレイ後にしこりのような物足りなさが残るのも事実か。
あと1ヶ月か2ヶ月延期しとけばもうちょっとよくなってたんじゃないかなぁと思わなくもなかったり。
なんかちょっと勿体無さを感じる一本でした。
以下長文感想。
ボリュームは大体20時間・・・くらい・・・かな?昨今のよくあるエロゲーとは構成が違うので
今ひとつはっきり明言しにくいですがちゃんとスキップとかを使えばこのくらいになるかと。
旧おとボク同様、物凄く共通パートが長いです。時間にすれば12時間くらい。ただ、その中で選択肢によって
ちょこちょこと小話の展開や登場人物がが変わっていくので、明確な共通ルートとは言いがたかったり。
ストーリーは第○話、という話数構成で成っており、、各ヒロインごとの完全な個別話は
大体ほぼ最後の1話のみです。一周さえしてしまえばサクサク攻略できるものの、一周すればほぼ展開は
読めてしまい、個別の話は楽しめても全体の新鮮味はあってないようなものになるでしょう。
システム面。ほぼ、旧おとボクをワイドにしただけ・・・じゃないでしょうかこれ。
いまどきびっくりするほど・・・よく言えばストイック、悪く言えば全く足りてない設定項目の数は
ある種の潔さすら感じますが、まぁちょっといくらなんでも時代遅れでしょう。個人的には特にこれといって
不自由なかったものの、せめて音声周りくらいはもう少し細かくないとニーズに応えきれないのでは。
また、主人公ボイスありのゲームなので、やはり「Hシーンのみ主人公のボイスオフ」機能がないのは致命的か。
スキップ機能がおそろしく遅いのも微妙。スキップでも慣れてる人なら文章が追えます。
また、「次の選択肢へ移動」がありますが、前述の共通ルートの長さと部分変化の関係上、飛んだシーンが
恐ろしく判りにくい。バックログをみても判然としないのでどうしてもスキップ後の数クリックは
若干の困惑を抱えながらとなってしまいます。また、スキップにしろ選択肢へ移動にしろ、味読にさしかかった
その瞬間のテキストのボイスを飛ばしてしまう悪癖があります。特に今作、分岐する部分がキャラのボイス、という
場面がとりわけ多いためどうしても気になってしまうポイント。バックログで再度再生しないと聞けないのは
流石に難としか言いようが無いでしょう。
システムビジュアル的には見易さに問題はないし、デザインも瀟洒ながら過度に煌びやかすぎるわけでもない、
実に「それっぽい」ゴージャスさがあって作品にぴったり。フォントも綺麗なアンチエイリアスのかかった明朝体で
かなり綺麗です。ただまぁ、これもぶっちゃけ前作とほぼ変わってないので、進化した感じは得にくいです。
ワイドになった画面は今ひとつ活かしきれていないか。基本的に立ち絵シーンにしろイベントCGにしろ、
キャラや要素が中央に寄っている傾向にあるため、無駄に感じてしまう部分が多いです。
ただしかし、千早がことあるごとに落ち込むシーンの動きなどはこの画面比率ならでは、と思うし、
Hシーンには結構画面全体を贅沢に使っているだけに、活かせてない、というよりは
活用にムラがある、と言ったほうが表現として正しいのかな。ともかく、この点は今後に期待です。
立ち絵シーンを彩る演出は小さなエフェクトのみ。これは表示時間も大きさもさりげないながら
効果音と巧く合わさっていていい味を出してます。
音楽。MUSICモードで聞ける曲数はなんと42曲と膨大!・・・ですがまぁ、前作をやった人なら判るでしょうが
半分くらい前作の曲です。(笑) サントラとも比較してみましたが、前作サントラであるmaiden's rest収録曲の
ボーカル含めその殆どが使われております。使われてないのは主題歌含め3曲ほどでしょうか。
当然のように違和感はさっぱりないですし、2からの新規ユーザーなら「なんて豪華な曲目だろう」と
楽しめるのでしょうが、継続ユーザー的にはちょっと微妙。「素晴らしき日々」のように前作アレンジが、とかなら
気が利いてていいなと思うのですが、流石にこれは。やはり前作のイメージが強いため元々耳なじみが良いので
新曲の印象がトコトン薄いです。日常シーンで特に旧曲が使われるためかかる頻度が高いのも致命的。
折角ZIZZサウンドで新曲もいい曲揃いなのですが、勿体無い。また並行して、新曲にいくつか
「滅多にかからない曲」があるのも惜しい。もうちょっとバランスよく配置してもよかったのでは。
絵。のり太氏の絵はなんというかあまり変化を感じにくいですが、氏の担当前作である「うな天」と比べれば
一目瞭然、着実な進化を遂げてます。ただ癖はそのままなので、相変わらず好き嫌いの激しそうな絵でも
あるのですが。少なくとも旧作と比べると大分体の形の崩れなんかは抑制されてますし、
絵のやわらかさなども増していて、より「おとボク」にふさわしい雰囲気の絵になったのは確か。
特にHシーンの絵の進化は目覚しい。実にエロい、素晴らしい絵を描いてくれてます。
個人的には雅楽乃、ケイリあたりに特に感嘆しました。
イベントCG枚数は120枚弱+SDイラストと結構なボリュームがあります。とはいえ攻略キャラが6人と
平均的なものより多い上、共通パートが長い分複数キャラを描いた絵が多い分、ヒロイン別個で割ると
そんなに多くは感じないので、誰か一人のヒロインに傾倒するようだと逆に物足りないかも。
立ち絵は劇中がまるまる一年を通すため衣装パターンは多いですし、その上キャラクター数がそもそもやたら
多いので、やはりというかポーズのパターンは少なめ。加えてお嬢様学校というだけあってどいつもこいつも
基本的におしとやかでおとなしめのキャラが多い事、制服がマーメイドタイプのロングスカート仕立てなのもあって
とにかく直立から動いてるような気がしない・・・のですがこれはまぁ前作から判りきっていたことではあるか(笑)
SD絵は非常にかわいらしいのですが、イベントCGの枚数の多さに反してあんまり多くないのが残念。
もうちょっとこまめに挿入されてもよかったんじゃないかなぁ。
キャラクター。
「おとボク」に、というかお嬢様学園モノに求められている、正しいキャラクター像がそこにある!・・・とまでは
流石に言いすぎかと思うものの、そう言ってもそろそろ良さそうなくらい実に魅力的で、かつ個性もあり、
ユーザーに好かれそうなキャラクター揃い。ケイリのような異色なお姫様キャラや、魔性の女タイプの香織理など
前作との差別化を図れているのもいい感じ。ただその差別化が仇となり、唯一、前作のメインヒロインだった
紫苑のような超鉄板系お姉様がいないのだけが逆に難点となっているか。それさえいれば
キャラクター郡としては完璧だったような気がしますが、これはストーリー上からしてもそんなキャラがいては
話が崩れそうだし仕方ないか。
あとはやはり魅力的すぎる非攻略キャラクターの数々たるも。登場シーンの印象深さは他のメインヒロイン勢の
誰よりも印象深い優雨や、前作キャラとのつながりがある初音あたりが攻略できないのは最初
何かの冗談かとさえ思いました。だってこの子たち、個別BGMも持ってるんですよ?
最初から攻略キャラとして考えていなかったのか、製作時間の都合で削ったのかは定かではありませんが、
これは致命的。何人のユーザーが涙を飲んでいることか。
主人公については、前作の瑞穂と同様か、超えるやもしれぬ魅力的な女装主人公です。
ただ瑞穂の場合プレイヤーにまんべんなく気に入られるキャラでしたが、今作の千早は
瑞穂以上に気にいる場合と瑞穂と比べるとちょっと、という人で意見が割れそうな感じ。
文武両道な上才能やセンスにも優れ、対人能力も抜群に高く、感情の機微にも敏感という化け物じみた
スペックの持ち主で、兎に角なんでも自分でこなすのでストレスはなくとも鼻につく人はいるやも。
「男性のアドバンテージ」を使うのでなく、純粋に人間としてのスペックの高さで物事をどうにかするので、
女装潜入モノとしての物足りなさを感じてしまうというのもあるやも。
個人的には瑞穂より好きなんですけどね。適度に打算的で、瑞穂より人間くさい感じがあるので。
シナリオとテキスト。
テキスト面については、これはもう流石の嵩夜あや氏。おとボクで感じたあの雰囲気がそのまま続いてます。
また、いわゆる前作は「主人公女装モノの金字塔」であると同時に「お嬢様学園モノの金字塔」
でもあると言えるのでしょうが、そこに対するユーザーの期待とプレッシャーを見事にいなせるだけの
他のセレブモノとは一線を画すような重厚で艶やかな描写力が今作では特に圧倒的。
地盤となる知識・情報量の密度が濃いのでしょう。他のお嬢様モノが霞んで見えてしまいそうなほどの
フィクションながらのリアルさがそこにあるので、作品没入感はかなり半端ないです。
この点に関しては文句の付け所がありません。
対してシナリオ。これまた良くも悪くも「おとボク」らしいです。ただ今作については、前作と比べると
女装して女子校に潜入、という事に対するスリルや背徳感と、それに付随するドタバタ劇なんて話よりは
どちらかというと身近な仲間と色々なものを乗り越えながらお互いに成長する物語、という味わいが強いです。
嵩夜あや氏のテキスト力の高さも合間って、感情の上下や情景の表現にも深みとと重みがあるので
仲間、信頼、友情、絆。そんなフレーズが好きな人ならむしろ前作よりも楽しめるのではないでしょうか。
勿論、比重がそちら寄りなだけで、上述のような女装ゲーの醍醐味がないわけではなく。むしろ今回は
主人公の「自分って奴は」的な葛藤が非常に楽しいです。
ことあるごとに完璧な女性のような振る舞いをして目立っては落ち込む様は天丼劇ながら笑ってしまいます。
ただし、女装モノの一つの山場となるであろう「女装バレ」についての物足りなさはあるか。
だいたいどの攻略キャラも主人公が女装してるからどうこう、なんてことよりも大きな比重でもって
悩まなければならない課題を持っているので、以前「アッチむいて恋」でも同じような指摘をしましたが、
そこを女装モノにおける最大の山場と期待しているユーザーにはちょっと残念なものはあるでしょう。
ただこれもいい点はあり、体験版で女装バレするキャラがいる事や、史などは元々が主人公の侍女であるという
立場もあり比較的序盤から味方が多いので、前述した主人公の落ち込み劇を筆頭に、ことあるごとに
主人公の出自を知ってる人間がさらりと茶化す様で場を和ませたり笑わせたりと盛り上げに一役買っています。
あとは個別の短さの弊害というか、主人公との恋愛関係、とりわけ主人公の恋心について
話が短い都合上どうしても唐突に思えてしまう面が多々。元々主人公自体の頭の回転が良すぎる上
度胸もかなりあるものだから、誰に惚れたどうこうでうじうじするキャラじゃないという前提の都合上なのかも
しれませんが、主人公が自分は誰々に惚れていたのか、と自覚してからそれを口に出すまでが
恐ろしく潔いので(笑)、なんというかそういう勇気が出せない機微を楽しむ、という面にもさっぱり向いてません。
ただまぁこの辺り、今上げた二点の問題に関しては完全にプレイヤーの好みの差で評価の上下が激しいので
明確にダメと断じるほどのことではないかなと思うのですが。
さて、要素別はこんなところでしょうか。
とにかくなんというか、あと一歩、あと今ひとつどの点も練り上げが足りなかったんじゃないかなと感じてしまう、
非常に惜しい作品でした。演出強化パッチで追加されるサイドストーリーも「都合上一部パートボイス」って
それつまり収録間に合わなかったってことだよね、ってことであり。本当にあとちょっとの延期で作りこめれば
もうちょっとよくなったところは多々あったんだろうなぁ、と思えるので非常に残念です。
まぁ、メーカーにも色々な都合があったのだろうとは思いますが・・・。
とはいえ、その物足りなさを減点したとしても、作品としては十分面白さでいえば良作の域に入るほどの
クオリティは全体通して保たれていましたし、前作が好きなら間違いなく楽しめるし、
総じて言えば十分以上に面白い作品だった、と言ってしまって構わないでしょう。
というわけで本作のオススメユーザー。
とりあえず「前作プレイヤー」はガチで。他、「女装主人公に抵抗がなければ大抵誰でも」と
「主人公が活躍するのが好きな人」なんかも結構楽しくいただけると思います。


















