
| タイトル |
bitter smile. |
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|---|---|---|---|
| メーカー |
戯画 |
発売日 | 2010年6月25日 |
| 原画 | ねこにゃん/marui | シナリオ | ねこにゃん/陸奥竜介 |
| 評価 |
73点(100点満点中) | ||
本家戯画、ねこにゃん氏原画久々の新作は「幼なじみ(が)ハラハラAVG」・・・というジャンルですが
どちらかというとキャッチフレーズの「ときめきに素直になれない」AVGですね。
原画家であるねこにゃん氏がシナリオに参加、ということで、その未知数の実力に
不安半分期待半分、なんて要素もありましたが、実際蓋を開けてみれば悪いなんてことは全然無く。
及第点かそれ以上程度の面白さはあると思います。ただ、話の内容にしろ登場人物にしろ、
細かいところで結構好みが分かれてしまって最終的に手放しでこの作品を「好きだ!」と言える人は
結構な数がふるいにかけられてしまいそうな気も。
特に「さかハリ2」としてこの作品を期待していた人には厳しいものがあるのではないでしょうか。
しかし全体を見れば要素の安定性も安心できるし、何よりとにかくセンスと雰囲気が素晴らしい。
味わいも無理に普通の萌えゲー恋愛ゲーと比較するのでなく、一つのエロゲーとしてのみ見れば
趣深いものもあり、総合すれば十分佳作の域には入るのでは、と思います。
以下長文感想。
作品のボリュームとしては然程多くもない、というかむしろ抑え気味。
共通ルート6時間、各ルート3時間×4くらい・・・かな? ただし個別ルートの長さに微妙に差があるので
3時間というのはあくまで平均の話。感覚ですが、多分「桜子>勇樹>要≧みい」くらいじゃないかな。
共通部分にも分岐や部分挿入イベントがあるのでいまいち明確な数字を出しにくいですが、恐らく
足せば18時間くらい、というのが妥当な数字じゃないでしょうか。
しかし、知世翔ルートくらいはあってもよかったんじゃないかなぁという気もせんくもない・・・。
区切りは話自体の大区切り、シーン区切り、行動選択画面とかなりつけやすいものの
話自体が比較的地続きな事、その割に時系列が1日単位で進まなかったり月単位でぶっとんだりと
進みの緩急が激しいこともあって変なところで区切ると再プレイ時に混乱しそうになることもあり
一長一短のバランスか。
システム。ここ最近のいつもの戯画システムを根幹にしているので
設定項目はアホほどあるし、安定性も抜群。むしろ設定項目が多すぎるのがマイナスなくらい。
見た目も決して悪くはないのですが、ただ今作にとってはこの「いつもの戯画システムの見た目」が
正直マイナス。とにかく本作はデザインのセンスが抜群に良く、この作品のために設定してある
システムグラフィックやボタンデザイン、効果等々の調和がかなり高い位置で取れているため、
このいつも通りの部分・・・微妙にフォントが縦長になる文字表示とか、キャラによってグラデつきの
文字色が変わるところとか・・・が、困ったことにこの調和から微妙にズレてしまっていて非常に勿体無い。
これに準じて、一応設定でオフにはできるものの、デフォルトでONになっている再生BGMの
曲名表示も微妙。せめてこのゲーム専用のデザインで表示が出れば、このゲームには
結構向いてるシステムだったと思うだけに、とにかく惜しい。
ただ、重ねて言いますがとにかくこのゲームのために作られた各種デザインの数々は素晴らしいです。
効果関係も、基本さりげなく、たまにギャグ時のみ激しいのがポツポツというバランスの
キャラエフェクトもいいし、安直なアイキャッチや日付表示でなく、「ひぐらしのなく頃に」のような
シーン終わりをおとなしめに「右下にロゴ表示」で締める演出もエロゲーとしては珍しく、かつ秀逸。
音楽。ボーカルが2曲、BGMが20曲前後。曲数としては平均的か最近にしては少し少ないものの
出来の方はどちらもこれまた非常に良い出来。これは音楽に限らず全体的にいえるのですが、確かに
どこか寂しく、郷愁をあおるような雰囲気に統一はされているものの、下町ゲー、というイメージよりは
ほろ苦い青春ゲーとしての演出としてかなり絶妙なマッチ感があります。どっちに振れてもゲームとしては
正しい認識なのでそんなに悪いことではないのですが。
初回版にはサントラも同梱されてるのでこの出来は非常に嬉しいですね。
絵。どうにもこうにもねこにゃん氏の絵ですね。相変わらず特徴的ではありますが、そこそこ広く
好まれる絵風なのではないでしょうか。特に今作は表情付けがうまいなと思いますね。
全体的にやわらかいイメージの絵風ですが、その表情のおかげでキャラの人間味が鋭角から鈍角まで
幅広く、かつユーザーに浸透しやすく表現できているように思います。
加えて今回は塗りが既存の作品と比べどこか褪せたような色調を使っているので
味のあるシーンの演出が表情×色合い×デザインの相乗効果でピンポイントの感情移入度が高め。
流石、みいちゃんのキスシーンのCGをまるまる販促のチラシに使ってるだけのことはあります。
キャラ数が結構多いので立ち絵のポーズバリエにはキャラの重要度に応じてかなりピンキリですが
劇中経過時間が季節単位で長いので衣装パターンは多いです。
イベントCG自体の枚数は80枚前後でこれまた平均的か少なめに振れ気味か。これは純粋に残念な点。
逆に背景の使い方は贅沢。ほとんど出番がない背景とかもバンバン作っており、またバリエもあるので
これに関しては一切の飢餓感を感じません。これ以上どこのどの時間帯を作れというのか、というくらい。
品質自体も雰囲気に完全マッチの背景で、この要素に関しては全幅で高評価。
キャラクター。
基本的には誰も彼も現実寄り。エロゲ的な味付けがそこそこ強いのは勇樹、みい、有河の三名くらいかな。
とは言え味付けがないわけではなく、みんなそれぞれに個性は強め。桜子なんてかなりキップのいい、
恋愛以外にはかなり竹を割ったようなお母さんみたいな性格なので、好きな人は物凄く好きだけど、
苦手な人もそれなりに多いかもしれませんし、勇樹は頑固でズレてるのでこれまた好悪別れそう。
キャッチフレーズの通り、兎に角女の子勢は主人公に対して媚びてくることがなく、
誰も彼もが壁を隔て距離を置いて接してきます。アウェーという程ではないにしても
この距離感はなかなか最近のゲームでは一週回ってお目にかかれないような気も。
でも本当に恋愛ゲームだって言うのならこれくらいが正しいようにも感じます。
一番のキャラクター性における問題児は主人公か。決して悪い人物ではないですし、ヘタレというほど
ヘタレでもないのですが、パッとした一芸に秀でているということもなく、かなり人物像として
この年代にこんな奴いそうだなぁ、という平均的なメンタルの持ち主であり、それでいて困ったことに
エロゲの主人公らしく感情の機微には中途半端に鈍感なのでとかく魅力が薄い。
ある意味このゲームにはこういう主人公たるべき、という構成ではあるのですが・・・
物語に移入するでなく、主人公に移入するというプレイスタイルには不向きである、と言えるでしょう。
で、シナリオ。
とことんまでに「ときめきに素直になれない」AVGであり、ほろ苦い青春ゲームそのもの。
再三言ってますとおり、演出関係の良さと合わせて青春ゲーとしての雰囲気のよさだけは兎に角いい。
内容やテキストもホームドラマ的で表情や感情の起伏に味があり、展開自体もお約束やご都合主義に
囚われすぎてないので、エロゲーを数こなしている人であればおそらく「こういうのもアリだよね」という
気分になる話。特にメインとなる桜子ルートに関してはこのゲームのコンセプトを
体言しているかのようなつくりで、「楽しめさえすればかなり楽しめる」話かと。
反面、本当にこのイベント・人物は必要だったのか、必要だったとして時系列としてこの場面に
挟むべきだったのかと疑問の余地がある部分や、(わざとの部分も多分にあるのでしょうが)未消化で
語りきられないいくつかの伏線の存在、などなど今ひとつ煮えきれない部分がある点や
何より前述でも語った主人公のメンタルからくる行動の整合性・説得力が弱いため
どうもやることなすこと中途半端に感じてしまうことが多いのが結構なネック。
ご都合主義に囚われない、ということ「よいこと」として上述しましたが、もしかするとある意味
もうすこし「物語である」と前提を利用してもよかったのかもしれません。
妙に等身大を意識しすぎて盛り上がりやテンポを損ねてしまっているようにも感じます。
調整の難しいバランスだとは思うのですが。
あと、音楽の項目でも軽く触れましたが、チラシやHP等広報資料から漂ってくる下町慕情的な要素を
過度に期待していると肩透かしかも。下町である必要性をあまり感じない・・・のですが、
しかし下町以外の別の場所で描くにも微妙かな?という中庸的な地盤構成。
下町っぽさは雰囲気作りの一環でしかない、と割り切る必要があるでしょう。
あ、エロに関しては1つ1つののシーンはそこそこに濃くて丁寧ですが・・・
如何せん全体に対する比率としての数が足りてません。
特にみいちゃんに関しては1シーンしかありません。個人的に一番がっかりしたポイントかも(笑)
さて、こんな感じで。
「ときめきに素直になれない」という"雰囲気"を味わうには決して悪くは無いゲームだった半面
単純な恋愛ADV、恋愛エロゲーとしてさかあがりハリケーンから連なるゲームとして求めるには
ちょっと微妙だった作品、といったところでしょうか。ユーザーが求めているのは残念ながら
後者を求めている人が多いのでは、と思うので、あまり世間的評価は悪いとは言わないまでも
芳しくもないかもしれません。
しかし確実に光るところがあるゲームでもあるように個人的には感じます。原画であるねこにゃん氏が
シナリオを書いた、ということも思っていたよりネガティブに振れるような悪さはなかったですし
話自体も絶対に好きな人は好き!という内容で全方位から駄目出しされるようなものでもなく。
何より雰囲気作り、という面に関しては昨今の作品の中でもかなり上出来な方。今年で言えば
シュガーコートフリークスや素晴らしき日々あたりにも及ばずとも遠からず、じゃないかな、と。
地味な点ですがこれら演出は作品を良い方にも悪い方にも相当影響を与えますので
今回の一つの美点として特に追求・先鋭化させていって欲しいと感じます。
さて、本作お勧めエロゲーマー。
「"ときめきに素直になれない"というフレーズに惹かれるモノを感じる、
年単位のキャリアのあるエロゲーマー」で。
初心者にはあんまりお勧めできませんが、好みがマッチすれば結構好きになれるゲームだと思いますし
昨今の開幕から終演まで甘み強めの作品群に飽きた人に、一抹のちょっとビターな味わいを。


















